五輪野球日本代表、韓国に勝つ

 いつのまにか五輪野球のアジア予選が始まっている。「いわゆる1つの」星野ジャパンというチームなのだが、最大の難関だった韓国戦を突破した。

星野ジャパン、五輪へ王手! 宿敵韓国に逆転勝ち(Sanspo)

 五輪野球の日本代表がプロで占められるようになったのは長嶋ジャパンからだが、日本代表ということでは、長嶋ジャパン王ジャパン→星野ジャパンと変遷してきたわけだ。長嶋監督が巨人監督を勇退してから、その後の花道にと日本代表監督にされたわけだが、そのプレッシャーも影響したかどうか、脳梗塞で倒れてしまう。奇しくも先日のサッカー日本代表のオシム監督が同じ脳梗塞で倒れたのも、やはり如何な百戦錬磨の監督といえども国の代表ということになれば、全くプレッシャーが違うものだということを窺わせるものかもしれない。


 アテネ五輪ではプロ球団がないオーストラリアに、WBCでは優勝はしたものの予選、決勝と2度も韓国に苦杯を舐めさせられている。韓国のプロ野球もレベルが上がってきたからとも言えるが、それにしても国の威信がかかるときになると異常なほど集中力が増す韓国代表に比べ、日本代表の方は逆にプレッシャーを感じてしまうせいか、本来のプレーが出来なくなる傾向にあるようだ。政治家などが好む「愛国心」の希薄さが原因なのだろうか

 サッカーでいえば、あの「ドーハの悲劇」の頃からそんな感じがする。しかし、何か「悲劇」にしてしまって、むしろそれに酔ってしまっているのではないかとも思える。国の威信もさることながら、やはりプロとしては、ここ一番の時こそ集中力、プレーを見せられることに存在価値があるのではないかと思う。「緊張して伸び伸びとプレーができませんでした」ではアマチュアと同じである。


 さて星野ジャパンになって、これまでの長嶋ジャパン王ジャパンのときの教訓がさまざまに反映されているようだ。長嶋ジャパン(実質は中畑ジャパン)の頃は、相手を舐めていたところがあった。各球団の主力がいるから楽勝とどこかで思っていた部分があったためか、チームとしての力が発揮できなかったようだ。王ジャパンではイチローというスーパースターが居たが、スターだけが居ても短期決戦ではなかなか勝てるものではないことが思い知らされた。


 そして星野監督だが、投手出身だけにやはり投手起用がきめ細かい。投手のそのときのコンディションも瞬時に見分ける判断もできるようだ。長嶋ジャパンは監督経験がない、選手まかせのコーチだけだったが、星野ジャパンには盟友だった田淵、山本という大物コーチもいる。実質3人の監督がいるようなものである。選手の方が大きな顔ができることもなさそうである。


 それでも今日の韓国戦は接戦で、からくも1点差で逃げ切ったところである。星野監督の弟子の中日や阪神勢が重宝がられる中で、少ない生え抜き巨人勢の阿部と上原が活躍した。むしろ巨人の中にいるより活躍しているのではないかと思えるほどである。特に上原は大学時代からほぼ10年間国際戦無敗である。学生時代は当時のキューバの連勝を止め、WBCでは日本に連勝して勢いに乗る韓国を止めたのも上原である。そして今回も、1点差での9回を完璧に抑えて日本代表に勝利をもたらした。


 さてまだ台湾との最終戦がある。そこで油断してよもやということはあるまいとは思うが、もう「・・の悲劇」のようなパターンはやめてほしい。投手に比べ打線は小粒に見えるが、プレッシャーがかかる中でプロらしいプレーを存分に発揮することさえできれば、おのずと結果は出てくることだろう。