羽生、歴代最速の通算1000勝を達成

 羽生現王座・王将がA級順位戦で勝利し、歴代最速最年少の公式戦1000勝を達成した。これまでの谷川九段の25年・40歳での記録を抜き、22年・37歳での記録達成であるという。

羽生王将:公式戦通算1000勝を達成 歴代8人目(毎日jp)
将棋の羽生王座、最速・最年少で1000勝(NIKKEI NET)

もうここ10年以上も、将棋といえば人気・実力ともに羽生という時代が続いている。しかしタイトル戦線に限って見れば、10年前に羽生が前人未到の七冠全制覇したのに対し、現在は、名人=森内、竜王=渡辺、棋聖棋王=佐藤、王位=深浦、王座・王将=羽生という王者が乱立する群雄割拠の時代を迎えている。


 実力者が増えたとも言えるが、羽生の神通力が絶対的でなくなったとも言えるのかもしれない。特に最も歴史のある名人では、ライバルの森内があと1期の羽生を追い抜いて、18世永世名人の称号を手にしている。七冠を制覇した頃には誰も予想もできなかったことである。つまりもしこのまま羽生が永世名人の称号を獲得できなければ、歴史的には名が残るのは森内で羽生は忘れ去られるということにもなりかねない。その時代の第1人者は名人であり、将来の歴史に残る殿堂入りが永世名人だった。現状は、羽生が森内に相性が悪いとはいえ、ずっとトップは羽生だと思われているからである。タイトルの数が少なかった昔では考えられもしなかったことである。


 ところが現在は、賞金額の大きい竜王戦その他タイトルが多くあり、名人や竜王だけを持っているのと、二冠以上保持しているのとどちらが難しいのか、とか実力ナンバーワンが非常にわかりにくい構図となっている。タイトル戦予選によってはリーグ戦だったりトーナメント戦だったり、タイトル戦も短期決戦だったり長期戦だったり、また最後はタイトルを争う棋士同士の相性もあったりする。それでも10年前にはそれらを超越した羽生の強さがあった。しかし周囲もプロ相手だけに、いつまでも羽生の一人天下は続かずに、次第にタイトルも分散していき、現在の状態に至ったのである。


 しかしそれにしてもこの記録である。19歳での初タイトル獲得に始まり、ここ15年くらいはずっと、トップクラスばかり相手にしての1000勝であるから、他の達成棋士と比較しても1勝の重みが違うようだ。1000勝の中でやはり20年以上もトップ集団に居続けて、それまでの最速1000勝達成者の谷川九段から挙げた勝利数が一番多いことからもそれが窺われる。相撲に例えれば、横綱大関クラスばかり相手にしての勝ち星ということになるだろう。


 いつまでも20代の風貌の羽生ではあるが、そろそろ中年世代にさしかかって、これから再びブレイクして竜王、名人の座を奪取することはあるのか。これから王将の防衛戦も控えてはいるが、さしづめ可能性のあるのは来春の名人戦登場なるかというところだろう。