グリーンITとサーバ仮想化

 今年は地球温暖化が世界的な問題として認識され、環境問題への取り組みが各国の急務の課題ともなった年であったといえる。そんな中で、PCやネットも消費電力や放熱が問題となっている。増大するネットやサーバの需要に対して、技術的に省エネルギーを実現し、地球に優しいPCやネットは実現することはできるのか。こうしたグリーンITへの取組みが、ネットの世界でも大きな比重をもってきそうである。グリーンITの現状をみてみよう。

グリーンIT 第5回 PCサーバー,UNIXサーバー(ITpro)
そのアプリケーションは、グリーン化を前提に記述されているか(ITmedia)

特にデータセンターのようなサーバの数が集中する場では、冷房などの空調設備も含めて消費電力量が馬鹿にならない。Googleのように世界に60万台以上といわれるサーバ数では、情報発電所どころか本物の発電所が必要になる。サーバ技術よりも電力供給が最大の問題と言われてきた。


 そしてネットの普及、Webサービスの増大などで、ますますサーバの台数は右肩上がりに増えている。そこで消費電力が少ないサーバ機であるエコサーバのようなものの開発が進んではいる。しかしパーツを集めて組み立てるだけのPCサーバでは、部品ごとに省エネといってもせいぜい限界があるだろう。

 そしてサーバーは基本的に24時間365日運用されているわけで、仮にアクセスが少ないサーバでも、フル稼働しているサーバと消費電力はたいして変わらないという性格のものである。そこで1台ごとの省エネは限界があるが、アクセス頻度が少ないサーバは仮想化技術を使って統合して、サーバの台数を減らすという方法が考えられてきた。


 仮想化技術は、1台のPCで設定環境を変えずに複数のOSを利用したり、あるいはターゲットとなるOSをホストのOSの中にカプセル化することによってセキュリティを高めるために利用するものだと考えられてきたが、意外なことに、これにサーバの統合技術としての意味が加えられてきそうだ。これによって、サーバ関係の消費電力が25%も削減できるという予測であるという。


 環境問題が引き金とはいえ、もしこうした方向にサーバ技術や運用が進んでいくとしたら、これは再びコンピュータが集中化に向かうということを意味しているのかもしれない。
 もともとメインフレームの時代は、すべて中央のコンピュータに集中していたが、ネットワークやインターネット技術により、複数のサーバへと機能が分散する時代になった。Webサービスの増大によってクライアントの要求はWebサーバに集中するようになったが、多様なWebサービスを提供するためにサーバの台数はどんどん増大した。Googleのサーバなどがその典型である。


 しかしエコシステムの観点から、再びサーバの台数やサイトの数は集約・集中されて減少に向かうということになる。歴史は繰り返さないが、形を変えて集中と分散が交互に起こってくることを示しているように思える。ただ、果たして環境問題全体の中で、IT技術が本当に地球を救える方向に寄与できるようになるのであろうか。