人気低落傾向の大学情報系学部

 少子化の影響か、ゆとり教育の効果?か、IPAのアンケート調査によると大学の情報系学部の人気とレベルが低下してきているらしい。大学全体が地盤沈下しているから、情報系に限った話でもないと思うが、少なくとも「コンピュータの勉強をする」ということが、学生にとっては魅力的なことでもエキサイティングなことでもなくなっているようである。

学生の「人気」「質」低落傾向で大丈夫?大学情報系学部を調査(@IT)

 人気がなくなってきたのは、PCやネットが普及したからとも言えるだろう。昔は大学に入らなければ、本格的なコンピュータやソフトウェアに触れることは不可能だった。だから高度なコンピュータを使いこなせるようになることは憧れにもなりえた。


 今はPCを使いまわしたり、ネットでWebやメールをやる程度のことは、特に大学に入らなくてもやろうと思えばできる環境がある。大学に入ってから授業でWord、Excelの入門からやったとしても、下手をすれば小学校の時からやっているという子供もいるだろう。では、プログラミングはといっても、これだけ便利なアプリケーションがあって自由にダウンロードして使える環境では、わざわざ自分でプログラミングを覚える必要性を感じないのだろう。昔はソフトウェアがなかったから、自分でプログラミングすることだけが、コンピュータの利用だったのである。つまり「コンピュータそのものの勉強」のモチベーションが見つけられなくなったのである。自分などは若い頃、ワークステーションを自由に使える環境がなかったことがいまだにコンプレックスのように気持ちの中に残っている。そしてそれがずっとコンピュータの勉強のモチベーションにもなってきた。ハングリーさみたいなものだろう。


 おそらく基礎学力の低い大学生では、上記の理由でわざわざ情報系学部を目指そうという気にならないのかもしれない。そしてIT企業への就職も、いわゆる3Kの職種に近いように思われているのだろう。大学もただ「コンピュータが置いてあります」だけでは魅力があるわけではない。もしPCだけなら、古い機種のままなら、下手をすれば学生の自宅PCの方が高性能なんてことにもなりかねないのが実情であろう。


 私見だが、学生も大学側も「コンピュータの勉強をする」と思っているのなら、だめだろう。「コンピュータで勉強をする」というのが正しいのではないか。コンピュータはどんなに進歩しようとも、人間活動の中では手段や道具に過ぎない。そのコンピュータを道具として使いこなす必要のあるテーマ(専門)を持つことが重要だろう。子供の頃から基礎学問を無視してコンピュータばかりやらせても仕方がない。英数国のどれも駄目だがコンピュータだけはできる、ということは少なくとも大学レベル以上ではありえないだろう。いや、ありえないレベルが今の大学には出現してきているのかもしれないが、コンピュータの勉強だけをしますでは、おそらく高度なコンピュータの活用もできないことだろう。