東芝がHD DVD撤退を正式発表

 予想通りというか、予想以上に撤退の正式発表は早かった。旧態依然とした大本営発表などをせず、東芝の経営トップが英断したことは、報道が先行して混乱が広がる事態を最小限に食い止める危機管理だったともいえるかもしれない。

東芝、HD DVD撤退を正式発表―米ワーナー離反など大きく影響 (nikkei TRENDY net)
「勝ち目はないと判断した」--東芝、西田社長がHD DVD終息を語る(CNET Japan)

 正式発表には、これまで報道された撤退の理由よりも新しい事実はなかったようだ。すでに販売したHD DVDのプレイヤー/レコーダのサポートを今後8年間続けるということくらいか。またDVD規格とはあまり関係ないと思えるNAND型フラッシュメモリの生産力強化などを説明したようである。


 どちらの規格に統一されたにしろ、DVDそのものがネット時代の主役とはなりえない。かつて「マルチメディア」という言葉がもてはやされた頃、その主役はCD-ROMだった。大容量DVDは動画時代にそれに代わって主役になるはずだった。だがそれはブロードバンドが普及するまでの話だった。自分もそれ以前に動画を含むシステムを提案したことがあったのだが、動画配信のパフォーマンスが最大のネックだった。そこで苦肉の策として動画ファイルだけは、クライアントにあらかじめ設置されたDVDに配布しておき、Webサーバにアクセスすると再生されるように考えたこともあった。それがブロードバンド普及で全く発想が変わった。今はサーバの能力やデータベースなどを考えるようになった。あえて言えば主役はサーバ側のハードディスクというかストレージである。


 PC側からはDVDはバックアップメディアの1つにしか過ぎず、それもハードディスク全体のバックアップはもはや望めない。シンクライアントからOSのブート用としての活用も考えられるが、それとて今では容量の大きくなったUSBメモリやコンパクトHDDなどでも可能であるし、アクセスも速い。
 結局、テレビの録画用かとも思うが、それとてレコーダのHDDに記録したものをPC側の外付けHDDなどにバックアップできれば十分なのではないか。ただDRMとか著作権による縛りで、リムーバブルなDVDにだけ1回コピーできるということだけに意味があるようなことになりそうである。そうしたネガティブな意味だけで存在価値があるというのも、先行きのない話である。


 今回の撤退の意思決定の速さは、ネット時代の進歩の速さとも無関係ではないだろう。確かに東芝は痛手には違いないが、ネット時代の本質的な事柄ではない。DVDなどに固執するよりも、もっと大きな勝負所はいろいろとあるだろう。たとえば、さて今春の東芝のノートPCはどうなることか・・。