Yahoo!はAOLとも統合交渉

 Microsoftからの買収の大きな口に飲み込まれようとしているYahoo!だが、News Corp.に続いて、AOLの親会社であるTime Warnerとの交渉も進めているという。見かけ上が選択肢が増えたようだが、実際はどこが落としどころになるのであろうか

[WSJ] Yahoo!、AOLとの統合も交渉(ITmedia)
 取締役候補の推薦期限を延期―
Microsoftの買収提案に抵抗を続けるYahoo!(COMPUTERWORLD.jp)

 Microsoftからの買収を避けたいYahoo!経営陣は、それを避ける代替案としてNews Corp.やTime Warnerとの提携を模索しているようだが、Yahoo!の株主からすれば、株主に最も利益になる合併の方がいいに決まっている。代替案とはいえ、Microsoftほど株主にとっては好条件になるほどとは思えない。しかし株主だけの利益でMicrosoftの言いなりになって合併すると、おそらくこれまでYahoo!を支えてきた多くの技術者達はYahoo!を去ることになるだろう。Microsoftにとっても、Yahoo!という会社そのものよりもYahoo!の技術者陣を獲得したい目的の方が強いであろうから、それも困る。あまり性急にYahoo!獲得に強硬な手段で動こうとしないのも、そうした事情もあるのだろう。


 その時間猶予の間に、なんとか株主も納得させられる新たな提携先がまとまるかどうかは、はなはだ不透明さが残る。いろいろと交渉しているポーズを見せて、なんとかMicrosoftとの合併を有利な条件で進めるための手段かもしれないYahoo!と交渉している企業にしても、まともにMicrosoftと資金面で張り合おうというつもりはないだろう。直接的には業種が異なるし、Yahoo!と提携するにしても、自社の1部門を強化するという意味合いくらいしかないだろう。Time Wanerにしろ、AOLは1部門に過ぎないので、むしろYahoo!に吸収させるような形にして、Yahoo!の名前で1部門が強化されるということになる。


 しかもAOLには、Netscapeを買収した失敗例がある。もしYahoo!を事実上買収したような形になったとして、いずれYahoo!Netscapeと同じような運命をたどらないとも限らない。やはりYahoo!の技術者が逃げ出すことになるかもしれない。「Yahoo!の独立性を」といっても、合併した直後はともかく、次第に大企業の中に体質的に埋もれる結果になるかもしれない。


 独立性を維持したい経営陣と、利益を優先したい株主と、ネットの中にデスクトップ時代と同様の影響力を広げたいMicrosoftと複雑に意図がからみあっているが、ユーザの観点は反映されていないような気がする。Microsoftと合併したとしても、それで検索なりネットサービスに関心が高まるかといえばノーであると思える。他の企業と合併したとしても、あくまでMicrosoftからの企業防衛策のためであり、そこからYahoo!単独ではありえなかった新しいものが生まれるとも思えない。やはり見かけ上は選択肢が増えたようでも、Yahoo!の進退は次第に狭められてきていると思える。