新検索エンジン「Wolfram|Alpha」とは

 Stephen Wolframの名前を久々に聞いたような気がする。あのMathematicaの開発者であり、物理学者であるはずだ。若い頃のセル・オートマトンの論文に記憶がある。そのWolframの創設したWolfram Researchが新検索エンジンWolfram|Alpha」を公開するという。早くもGoogleキラーとまで噂される新検索エンジンとはどんなものなのか。

新検索エンジン「Wolfram|Alpha」、スパコン環境で高度な処理に対応(CNET Japan)
グーグルキラーと目されるWolfram|Alphaが公開に--その日、グーグルは(4.30)
新検索エンジン「Wolfram|Alpha」、5月18日に正式公開(ITmedia)
Googleよりも賢い(?)ナレッジエンジンが5月に登場(3.9)
The Computers Powering Computable Knowledge(Wolframalpha Blog)
天才が作った新検索エンジン『Wolfram|Alpha』と、Googleへの影響(WIRED VISION)

 記事によれば、単なるサイトの検索エンジンというより、「ナレッジエンジン」というべき、知識を検索できるものであるようだ。昔でいえば人工知能の知識ベースに相当するものだろうか。バックグラウンドで計算も行うなど科学技術的な内容の知識の検索が主なものになるようだ。Mathematicaもベースとして使うようだから当然ともいうべきか。今月中に一般公開もされるようだが、その全貌はまだよくわからない。


 Mathematicaは数学やその応用分野で数式処理を必要とする人にとっては優秀なソフトウェアである。ただソフトウェアとしては、かなり高価である。現在では軽くPCの価格を上回ってしまう。また組織向けにはオンライン版もあるが、それもかなり高いので理工系の大学や研究所のようなところくらいが顧客といってもよいだろう。ある意味、業務用アプリケーションみたいなものである。


 そんなMathematicaやその周辺サービスだけを行ってきたWolfram Researchが、知識検索エンジンという大きなジャンルに乗り出してきた。早くもGoogleと比較しての議論があるようだが、同じ検索といっても異質のものであるように思える。Googleはあくまで関連するWebサイトの場所を検索するものであり、検索内容に答えるものではない。だからGoolgeサイトにだけ留まっていても、元の問題解決になるわけではない。問題解決をしてくれそうなサイトを紹介、誘導してくれるだけである。ところがこのWolfram|Alphaは、他のサイトをどれだけ検索、利用するのかはわからないが、自らが計算まで行いながら問題解決まで行ってしまうというものであるらしい。比較的漠然としたことを調べようとするならばGoogleだが、問題内容がはっきりしている狭いテーマに関してはWolfram|Alphaという位置づけかもしれない。

Stephen Wolfram discusses Wolfram|Alpha: Computational Knowledge Engine



A Sneak Preview of Wolfram|Alpha


 いずれにせよ、これからGoogle検索に対抗するというようなものではないだろう。Mathematicaをベースに、より広い知識をWebからクラウド的に提供するようなものなのかもしれない。天才学者の考えることは、実際公開されてみるまではよく理解できないというのが実感ではある。