「5次元ディスク」とは何か

 「5次元ディスク」とは何だろうかとタイトルに惹かれたが、新しい光ディスクの可能性を示したものだということらしい。科学雑誌「Nature」に掲載され、すでにSamsungとも契約しているという。

大容量の「5次元ディスク」、豪大学が開発(ITmedia)
自宅の映画コレクションが1枚に、DVDの1万倍の容量「5次元ディスク」(AFP BBnews)

 光ディスクはレーザ光を照射したときの物質の相変化を利用して、記憶させることができる。これは物質だから3次元構造というわけである。これのディスク表面にナノ構造を持った素材を付加して、光の色によるスペクトルの次元と偏向による次元を加えて5次元構造というわけである。


 ただ、上記のような3+2次元なので、構造上やや疑問もある。付加した次元を加えて配列のように考えれば、3次元ではX[A][B][C]のような記憶ができるとして、X[P][S][A][B][C]のようになったとしてよいのだろうか(P:偏向、S:スペクトル)。偏向が0,1の2方向だけだとして、X[0][S][A][B][C],X[1][S][A][B][C] という記憶はできるだろう。しかし物質構造をも変えた X[1][S][D][E][F] のような記憶はできないのではないか。つまり元の3次元の情報に余分に2次元の付加情報を増やすことができるだけではないかと思える。3次元の基本情報個々に2次元の属性情報が付けられるだけのような気がする。

 とすれば、たとえば1つの3次元構造に2種類のデータを記憶するには、それらの差をどこかに記憶しておけばよいことになるのだろうか。そうなると今度は読み出しのとき演算処理が余分にかかることになるように思える。


 そういえば人工的な超格子というものがあった。光の次元を取り入れた一種の超格子といえるかもしれない。実用化には5年以上かかるとのことだが、今のディスク装置と大差ないもので使えるものだとしたら現実的な新発明だといえるだろう。ただ5年も経てばDVDそのものが廃れてきている可能性がないともいえない。