日本のサーバーは米国の半値

 Windows Serverを売る米国Microsoftの幹部がやや愕然として述べた言葉である。米国でサーバーといわれるものは最低10万円以上、日本では5万円以上だという。Windows Serverを入れていないサーバーでは1万5千円のものまで目撃したのだという。

「日本のサーバーは米国の半値」と米マイクロソフト幹部(ITpro)

 一口にサーバーといってもMicrosoftの幹部の人は、どのレベルのサーバーのことを言っているのだろうか。正規のWindows Serverを導入しようとするエンタープライズ市場か、Linuxサーバーを入れる中小の市場のことか、個人でサーバーを運用している人のことまで含むのか。エンタープライズ市場なら、このご時勢でコスト削減も必須とはいえ、サーバーも大手メーカー製のラックマウント式やブレードサーバーを導入し、有償のサーバー群も導入しているはずである。サーバーソフトの価格だけでなく、人件費なども含めたネットワークの運用やサポート全体に経費がかかるから、オールインワンで導入した方が結局経済的だからである。しかしWindows Serverは内部ネットワーク向けとはいえ、運用にはソフトウェアの導入コスト以上に経費がかかる場合もある。


 中小の企業だと、自前でサーバーを運用することが多いから、サーバー機も格安のものを導入できるに越したことはない。そうやってせっかくサーバー機やネットワーク機器などにかかるコストを小さくしているのに、わざわざ高価なWindows Serverをすることもない。そこでオープンソースLinuxサーバーを導入するのは、現在では当然の選択である。そこにMicrosoftが疑問を感じるのだとしたら、あまりにも時代認識がズレているとしか思えない。どうしてもMicrosoftネットワークが必要とするならば、Sambaサーバーを導入するまでのことである。そこに改めてWindows Serverを売り込もうとするのは無理な話である。個人についても同様で、インターネットサーバーを運用するのに、Windows Serverを導入しようとする人はいないだろう。よりLinuxを深く知っている層だともいえるからである。


 かくしてメーカー製のデスクトップ型サーバー機でも数万円くらいから入手できるから、これに自前でLinuxサーバーを設定すれば5万円のサーバーでも立てられることになる。ただし自前だから運用コストは入っておらず、手弁当かボランティアみたいなものになる。


 ところがさらに低コストでサーバー運用できる可能性が出てきた。クラウドである。サーバー機など持たず、日頃の電源管理やらバックアップやら故障管理の必要がなくなり、もちろんソフトウェアの経費も不要となる。Amazonクラウドでは、サーバーとストレージサービスで1ヶ月フル稼働したとしても1万円程度で運用できる。自前のサーバーを持てないベンチャー企業ではクラウドが企業の存続の前提にさえなっている。Amazonクラウドの中でWindows Serverを使えないことはないが、特別の目的でない限り、わざわざそうした使い方をするとは考えにくい。ましてや従来のように固定されたサーバー機に定番の有償サーバーソフトという概念自体が、サーバー仮想化の流れにあっては意味がなくなりつつあるように思える。


 実は自分は、最初に仕事でサーバーといえるものを扱ったのは、Windows NT Serverだった。その後のServerにも触れたことはあったが、次第に必要性がなくなっていったのが現実である。今やWindowsは完全にクライアントの目的だけとなった。