Microsoftの新検索エンジンは「Bing」

 「Kumo」かと思われていたMicrosoftの新検索エンジンはブランド名が「Bing」となり、6/3に正式に公開される。ただし日本語版はまだ公開されず、当面はベータ版としてLive Searchのデザイン画面がBingに変わるだけで、検索の内容はLive Searchのままだという。

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 目指すところは「意思決定支援エンジン」であるという。意思決定と聞くと、どうも昔から聞く狼少年的な「人工知能」を連想してしまうのは古い人間だからだろうか。従来の検索の(とMicrosoftが言えばGoogle批判に聞こえる)、羅列的な検索結果を出すだけではなく、もっとメリハリの利いた結果を表示することによって、ユーザが次のアクションを起こしやすいようにリードできる検索結果を出すということなのだろう。それはどこかに、Googleページランクではないが、検索内容と結果に「評価」や「価値」を付加することになるのだろう。これは検索する側の知識とか先入観とかがキーワードに反映するわけで、場合によってはそれは間違っているケースも多い。Google検索の「もしかしたら○○○」などは、そうした先入観を補正するものである。つまり、検索する側は「よくは知らないから」検索するのであって、1度だけの検索することによってはその一部が分かる可能性があるが、本当に知りたいことはさらにその結果を手がかりとして、「人間自身が学習しながら」再度検索キーワードを組み立てなおして検索する必要があるということである。あまり検索エンジン側が、検索結果を余計なおせっかいでいじらない方がよいといえることもあるかもしれない。


 ネット検索の歴史的に見れば、かつてはなるべく多くの関連するWebページを見つけられれば喜んだものだが、現在のように情報が飛躍的に増えている状況では、まともに見るのは検索結果のせいぜい数10件以内くらいが関の山だろう。実際に初期検索で必要とする情報はそれでこと足りたりする。であるから、検索する側にとっては意味のある検索結果が数10件以内に上がっている必要がある。それ以下は検索されていても目には触れない可能性の方が大きいだろう。しかし本当にユーザが欲しい情報をその数10件以内、あるいは全体からそれに同等な情報を、いかにシステムが進歩したとしても、わずかなキーワードから絞り込むのは至難の業のようにも思える。まあ、実際に使えるようになってから、同じキーワード組み合わせ検索で、Google検索とBing検索がどれだけ違うものか、試してみることにしよう。


 マーケティング戦略的にはGoogleの現在の座の原点である検索をターゲットに置いている。ライバルの得意とするジャンルを真っ向から潰しにかかるのは、Microsoftの昔からの手法のままかなとは思う。仮にGoogleから検索のシェアを奪えば、大きくGoogleに傾いている検索広告の収益を増やし、また競合するWebサービスMicrosoftに傾かせることができると考えているのだろうか。


 もはや、時代は検索だけではなく、それに連動したトータルのネットサービスの質と内容にかかってきている。そしてそのトータルの内容がクラウド推進の原動力となるような気がする。Microsoftが単純にGoogle検索のシェアを奪うという局地的な面をみているではなく、クラウドのサービスのためのベースを強化するためと考えているのならば、検索部門を強化することにも意義があるだろう。それによって、どのようなネットサービスが円滑に運用されるようになるかはこれからである。検索が強力でも、それに連動するサービスが不評であれば検索も生きないことになる。


 Yahoo!の買収を画策した頃には、並行して検索部門を強化する事業のプランのことも言っていた。買収失敗後は、買収のために用意した資金をそちらの事業に回すことができるから問題ないようなことも言っていた。このBingがそうであったなら、これでYahoo!の検索部門だけでも買収する話も完全になくなったと見てよいのだろうか。