ムーアの法則の限界は2014年

 すでにIBMの研究者にも指摘されていたムーアの法則の終わりは、2014年であるという。Intelの設立者が「マイクロプロセッサ上のトランジスタの数は約2年ごとに倍増する」と予言したのが1965年だから、2014年までとして約50年もこの法則が成り立って進歩を続けてきたことになる。コンピュータの世界で50年間とは、莫大な時間である。よくそれだけの期間、成り立ってきたことの方が、改めて驚きである。

「ムーアの法則」の限界、2014年に―iSuppli(ITmedia)

 しかし終わりが近づいていることとその理由を聞くと、改めてムーアの法則とは何だったのかという疑問も湧いてくる。技術革新のスピードの経験則なのか、製造技術の進歩のスピードなのか、経済投資に連動するものだったのか、はたまたIntel社内の単なる開発目標だったのか。


 ムーアの法則が止まる理由が、技術的限界によって半導体製造装置が非常に高額になるからだという。だから製造コストがかかるから量産による価格引下げができなくなるのだという。ということは、集積化の原理的な限界ということではなさそうである。技術的には、まだ集積化の限界には達していないようである。ただペイしなくなるから、それ以上の開発はしなくなる。だからムーアの法則は終了するのだということになる。


 自分は技術的限界のことだけかと思っていたから、この終わり方にはやや拍子抜けがする。技術的な限界では、これまでも何度か危機はあったと考えられる。そもそもミクロン単位になるとシリコン表面での量子効果が現れてきて、これをどうやって避けるかという問題があった。そしてi386のクロック数100MHzあたりになると発熱が大きくなり、回路が溶けてしまい限界かと思われたこともあった。ちょうどi486に移行する前のあたりである。IBMi386のCPU開発をしており「Blue Lightning」と呼ばれていた。だからIBMの研究者がムーアの法則に関心があり、それに言及するのはなんとなくうなづけるのである。


 果たして「終わりの予想」のようにムーアの法則から外れたとしても、ペースダウンするにしろ、集積化そのものが終わるわけではないだろう。本当の技術的、原理的限界はどこになるのか、そしてその頃には全く異なるアーキテクチャのプロセッサが現れているのだろうか。