Twitterとイラン抗議行動

 大統領選後、抗議行動の混乱が続くイラン情勢だが、この背景にはTwitterなどのインターネットのソーシャルメディアの存在が大きいようである。アラブの国といえば、イスラム教と礼拝ばかりかと思っていたが、もうそれだけの時代ではなくなっているようだ。

Twitterなどで加熱するイラン抗議行動、米国の民主化戦略との関係も(INTERNET Watch)

 そもそもインターネット初期の頃から「インターネットは民主主義の道具」と言ったのはヴィントン・サーフだったと思うが、フランスが核実験を強行したとき、学生が中心となって、世界中にメールで「核実験反対」の署名を集めたことがあった(1995年)。インターネット上では、またたくまに多くの署名が集められた。サーフはこうした行動に対して「あなたがたはインターネットの正しい使い方をしてくれた」と賞賛した。インターネットがこうしたことに利用された初めての事例だった。それより昔の東西ドイツを分断していていた冷戦時代の産物の「ベルリンの壁」を崩壊させたのは、テレビというメディアだった。いくら壁を立てても電波は正しい隣国の情報を届けられたからである。


 1995年よりその後はWebが主流になり、当時とはインターネットで利用できるサービスも大きく発展した。現在急速にユーザ数を増加させているTwitterは、何事もなければ、ただのつぶやきか独り言にしかならないかもしれないが、緊急時に不特定多数の人と連携を取り合うコミュニケーションツールとして、大きく役に立つことを緊迫した情勢下で実証しているようなものである。そこにYouTubeによる映像もあれば、GoogleのサービスもSNSFacebookもある。まさにWeb2.0が効果的な抗議行動を可能にしているようなものである。オバマ政権の大統領府がこれらの公式チャンネルを持っているたことと、相通じるのではないかと思える。人々はネットを通じて、正しい情報を求めようとしているのである。


 権力者側からすれば、ネットは民衆を扇動するものとしか映らないかもしれない。そこでトラフィックを遮断したり検閲を行うような暴挙に出る場合もあるが、イランではインターネットの接続を制限することもできない事情もあるようである。果たしてインターネットが正しい使われ方をしながら、このまま推移していってイラン情勢はどういう結末に落ち着くことになるか。インターネットと民主主義の今後を占う1つの試金石として、世界の注目を集めているようである。