羽生名人がカド番から逆転防衛

 昨年度名人位を奪回した羽生が、やっと名人防衛に成功した。今期は2勝3敗のカド番に追い詰められてからの逆転防衛だっただけに、一時は再び羽生が名人失冠、郷田新名人誕生かと思われた。

将棋:羽生が郷田降す…4勝3敗で防衛 名人戦・第7局(毎日jp)
将棋:カド番から逆転、羽生名人が防衛…光る勝負強さ

 7局全局の内容を見ていたわけではないが、カド番になった第五局などはかなり一方的な内容で敗れたと思われただけに、今回は防衛が難しいのではないかと思われた。昨年度、通算五期獲得でようやく十九世永世名人資格を獲得したことで、名人に関しては燃え尽き症候群のようにならなければよいが、と思っていた。


 また七番勝負に関しては、昨年は王位戦で深浦王位に最終局に破れ、王位奪回に失敗し、竜王戦では永世竜王資格がかかった最終局に渡辺竜王に敗れるという、ここ一番に敗退が続いた。竜王戦では3連勝からの4連敗だっただけに、土壇場での勝負弱さが気になっていた。それでも今回はなんとか最終局に持ち込んでからも、比較的危なげなく防衛を果たしたようである。逆に挑戦者の郷田九段に、ここ一番で何か誤算があったのか、意外に早い投了となり、名人戦は決着した。実力的には紙一重とはいえ、やはり名人は数少ない選ばれし者だけがなれるものであり、回り順で容易になれるようなものではないことを、改めて認識させられる。


 さて、たまたま夕方の衛星放送でポイントになる局面を見ることができたので、とてもプロの読みは理解できないものの、最終第七局のポイントになった局面を自分なりに取り上げてみよう。いや、単に初めて将棋の局面図というものを作成して貼り付けるということをやってみたかっただけである(笑)。


矢倉模様で始まった序盤戦、持久戦になるかと思われたが、羽生が第1図で、突如▲6八玉といわゆる「早囲い」に出たために、一気に急戦の流れになっていく。結局、羽生はここから攻め一方の展開になった。

第2図は、羽生の攻めに郷田九段が△1五角と切り返しに出たところである。この局面だけ見れば、後手は3三とか4二に居た角が端に飛び出したように思えるが、これは「△1五角打」である。直接△3七角打と先手の飛車に当てるのではなく、わざわざ端から打ったところにハッとさせられる。通常はこうした角打ちは妙手であることが多い。

第3図は、第2図から角交換後、改めて△3七角と羽生の飛車に当てたのに対し、▲3八飛と当たりを避けたところである。第2図で直接△3七角とした場合と比べれば、△2六角成が生じていることがわかる。ところが郷田九段はここで△1九角成と香を取る手を指してしまった。ここでは△2六角成として、もたれながら羽生の攻めを催促した方がよかったようだ。そのため、以後は▲4四銀成から▲3三歩で、羽生が攻め切ることができたようである。