朝日新聞が CNET Japan の事業継承

 このブログでもしばしば記事のネタ元としてリンクさせてもらっているCNET JapanZDNet Japanの運営が、CBS Interactiveとその日本法人であるシーネットネットワークスジャパンから、朝日新聞社に移行する。以前から噂はあったが事実だったようで、9月1日より正式に移行することが決まった。最終的な事業継承の形は、まだ調整中だという。

朝日新聞社、CNET Japan,ZDNet Japan等の事業を米CBS Interactiveより継承(CNET Japan)
朝日新聞、CNET Japanを事業継承 9月1日から運営へ(ITmedia)
CBS、CNET Networksを18億ドルで買収(CNET Japan 2008.5.16)

 CNET Networksの方は、昨年CBSに買収されてCBS Interactiveの一部となっている。その日本法人だから、朝日新聞はIT系企業を買収したというわけでなく、旧メディアであるCBSから一部事業を譲り受けた形ではある。


 しかし朝日新聞のような伝統的旧紙メディアと、IT系ニュースのWebサイトのイメージとは全く対照的である。海外記事の翻訳記事が多いとはいえ、今後記事の内容にどう影響してくるのかという懸念がないわけではない。
 IT系の情報が中心とはいえ、朝日新聞が運営することにより何が期待できることになるのか。むしろ思想的に色が付くのではないかと懸念する人もいるかもしれない。


 そもそも現在紙メディアは、ネット情報に押されて衰退しつつあり、どの新聞社も広告、部数とも減少させている。特に昨年の朝日新聞の赤字転落と部数減少が話題にもなった。そうした背景でのこうした買収は、大げさに言えば、新聞の将来の命運を賭けたものであるともいえるかもしれない。新聞に限らず、雑誌、テレビなど単方向の旧メディアは、ネット時代になって大きな岐路に立たされている。このまま衰退の一途を辿るか、ネットに対応した新しい形に生まれ変われるかである。少なくとも取材力があって、いち早く1次情報のニュースを提供できるところは必要である。しかし、新聞もテレビもWebサイトも持っているとはいえ、あくまで旧メディアを補足するものにしかなっていない。このへんの発想が根本的に変わらなければならないのかもしれない。それは「自分達こそ世論である」という発想であろう。かつて故・筑紫哲也氏は、ネットの書き込みは「便所のの落書き」だと言ったのは象徴的であった。今ではネットの中にあっては新聞社の「社説」なども「一部の人の意見」に過ぎないということである。


 一方でネット系の企業は、Googleなどの一部を除き、歴史も浅いだけに、まだまだビジネスモデルと経営が確立しているとはいえない。YouTubeの収益構造が確立していないことからも推して知るべしである。ここに旧メディアとネットの結びつきが生じることになるのだろう。旧メディアは資産があるうちに、ネットを取り込んだ新しいビジネスモデルを確立することに、重い腰を上げざるをえなくなっている。ネット企業も安定した経営を確立しようとする。ここに一見、水と油のような両者が結びつくことになる。ただし本当にうまくいくには、文化の異なる両者では相当の軋轢もあることだろう。実際CNETがCBSに買収されたときも、多くのCNETのスタッフは去ったようである。そうした軋轢と困難を乗り越えられた組織だけが、将来生き残ることになるのかもしれない。