NHKオンデマンドは苦戦

 NHKの「見逃し番組」のネット配信であるNHKオンデマンドが、予想に反して視聴者が少なく苦戦を強いられているという。NHKが番組を進んでネット配信するとは画期的だとは思ったが、こうなることはある程度予想できたことである。

NHKオンデマンド苦戦 スタートから半年、採算の道険し(ITmedia)

 NHKオンデマンドは、有料で見逃し番組をネットで提供している。ネットを使うのはよいが「有料」がいただけない。なぜならいくら見たい番組を見逃したからといって、受信料は払っているのである。放映日に見ようが見まいが受信料は取られているのに、ネットだからといって、なぜ二重に受信料を払わなければいけないのか。「番組を見れなかったのは自分のせいなのだから、どうしてもネットで見たければ、別料金をまた払え」というようなものである。それなら本来の受信料の方を返してくれといいたくなる。もともとの番組の視聴が無料の民放が、後からネットで見る際は有料になります。ただしCMは付きません、というのならまだ許せる。公共放送の受信料の二重取りは、ネットの試みの是非のいかんに拘わらず納得できないものである。サービスが始まった頃、直感的にそう思えたのだが、やはり世間でも同様に考える人が多かったということだろう。


 NHKのお偉方は慌てたようだが、ネットに対しての読みが甘いといわざるをえない。既存メディアが従来のコンテンツをネットに持ってきたとき、同じようにネットで課金できるものなら、新聞社サイトや雑誌社サイトなどはとっくに有料化して収益を出すことができていただろう。一部会員登録制で有料にしているコンテンツはあろうが、その収益は微々たるものであろう。そうした中で、NHKだから有料でも視聴者が付くだろう、それだけNHKの番組には魅力があるはずだと考えたところに無理があったようだ。残念ながら、それがネットの特性なのである。


 ネットの方が料金はかからないはずという常識があり、また情報の質としてはリアルタイムでは高くても、過去のものになれば次第に価値が下がると考えるのが普通である。後からの情報の方が高く付くというのは、話が逆であると感じられる。放送する側にしても、再放送などをするのはコストがかかりそうだが、ネット配信ならサーバに映像を置いておくだけだろう。無理な課金をしようとすれば、課金システムそのものにコストがかかるという本末転倒な話になりそうである。


 朝日新聞CNET Japanを手に入れて、少しは変わることができるかと注目されるが、NHKもネットに対してはまだまだのようである。