Google Chrome OS が発表

 ついにそうきたかという感じである。Googleネットブック用の独自のOSである「Google Chrome OS」を発表した。ブラウザのChromeを出したときも驚かれたが、大げさに言えばこのChrome OSはネットでのアドバンテージを生かして、ついに最後の聖域に最終戦争を仕掛けたという気がする。当分の間、この話題は続いていくことだろう。

Introducing the Google Chrome OS(The Official Google Blog)
グーグルの「Chrome OS」開発にHPやエイサーが参加(COMPUTERWORLD.jp)
グーグル、「Google Chrome OS」を発表――来年には搭載ネットブックがお目見え
「Chrome OS」がWindowsを脅かす可能性は大―アナリスト分析 
Chrome OSとAndroid、両者の「相違点」と「共通点」

 折りしもWindows 7の発売日とエディションの種類が発表されたばかりである。Vistaで不評をかこった分だけ、なるべくWindows 7への期待感を高めたいのがMicrosoftの立場であろう。しかしもう現在では、かつてのようにOSそのものの機能に期待している人は少ないだろう。ネットが主役の時代ではOSはそれを支える基本パーツに過ぎない。いい例が仮想化ソフトであろう。OSよりもっとプリミティブである。ところがいまだにWindowsが主役であるかのように宣伝されても、時代錯誤なのではないかとさえ思える。そしてWindows 7ネットブックに対する立ち位置がはっきりしなかった。当初はアプリケーションが3つまで起動するような制限を付けるStarter editionだとか意味不明のものを出してきて、批判されるやどのエディションでも動くようなことを言い出すし、結局、ネットブック用のエディションはまだ公表されていない。実は今まではXPを延命させてなんとか誤魔化してきたが、ここがWindowsの最大の問題点だと思っていた。


 GoogleChrome OSの立場は明快である。Chrome OSは、まさに現在のネットブックだという。これは本来のネットブックの用途を再び思い出させるものである。ネットブックはネットに接続して使ってなんぼのものであり、近い将来的にはクラウドに接続して使うのが普通の使い方になるのである。この点、PCにはソフトも入れられるし、ネットに繋いで使うこともできる、何でもできるようなことを言っているMicrosoftとでは明確に差がある。先行するクラウドベンダーのGoogleならではのネットブックの位置づけの主張である。


 自分もクライアントにはあまりコストをかけずにネットブックで十分、その分クラウドに投資せよ、という考え方だが、そのネットブックに対する答えがChrome OSであるというGoogleの提案だと思える。


 さっそく疑問やら批判めいたことをいう評論家もいる。巨大化したGoogle相手ならではでもあるからだろう。まずAndroidとの重複はどうなるのか、ということがある。確かに先日、Android搭載のネットブックがどこかのメーカーから発表されているが、そうしたことをとらえているのだろう。Androidは、音声機能付きなどあくまでスマートフォン向けであるというのが、現時点での回答であるようである。しかしこれとて将来的にはどうなるかわからないし、選択肢は多い方がいいに決まっている。AndroidChrome OSもオープンソースプロジェクトである。それよりgOSChrome OSに発展的解消だろうか。


 それからWindowsとの比較をしながらの批判である。「Windowsと肩を並べるのは・・」これは当たらないだろう。PCのOSとは言っても立ち位置が全く異なる。Windowsは、単的に言えばOfficeなどのWindowsアプリケーションを動かすものである。Chrome OSはブラウザベースでWebサービスクラウドとの接続を前提にしたものである。「Chrome OSでWordは使えるのか」などと聞いて、Windowsと肩を並べるのはいつかなどとは考えない方がよい。またそうした発想の人は、いくら安いからといってネットブックは使わない方がいいだろう。それより、WindowsはいつWindows Azureに全面移行するのかという議論した方がよいだろう。


 WebブラウザベースのOSとなれば、思い出されるのはJavaOSをベースとした「ネットワークコンピュータ」構想である。OracleやSunが提唱したこうしたコンピュータは「500ドルコンピュータ」と言われた。クライアントはほとんどリソースを持たず、サーバーに処理を依存するからである。いまやネットブックは300ドルコンピュータくらいになりつつある。JavaがOSではないが、LinuxベースのChrome OSがこれに代わりそうである。「ネットワークコンピュータ」が提唱された当時は、サーバーサイドに依存できるほど回線の帯域がお話にならなかった。現在は光回線はじめ、SaaSからクラウドの環境が整いつつある。もちろん当時とそのままではないが、形を変えた「ネットワークコンピュータ」がネットブックであり、それを動かすのがChrome OSであり、プロデューサがOracleからGoogleに代わったと見ることもできるだろう。