Office Web Applicationsのライセンス体系はどうなる

 Microsoft Web Applicationsの発表は、それなりにインパクトを持って反響を呼んでいるようである。個人でも組織でも誰でもが使っているアプリケーションだけにそれも当然である。デスクトップアプリの代表格OfficeとWebサービスは、これまで対極にあるものという見方があった。これに一石を投じたのがオンラインOfficeであり、とりわけ影響力の大きさからいって、Google Docsの存在は大きかった。そしてMicrosoft OfficeすらもWebサービスSaaS化されていくだろうという予想があった。そして今回のOffice 2010がその転換点となるバージョンになると見られる。しかし、そうなると大きな難題は技術的なものではなく、旧態依然としたライセンス体系にありそうである。

マイクロソフトのライセンス体系ではWebアプリ時代に対応できない(COMPUTERWORLD.jp)

 デスクトップのOfficeは従来ライセンスのままで有償、オンラインOfficeは機能限定ながら無償でオープンなサービスというダブルスタンダード的な体系が果たして可能になるのか。ただでさえ複雑な(というか混乱的な)ライセンス体系であるのに、これに無償サービスも加わるのだから余計にわからなくなるだろう。


 特に組織で有償で導入する場合、どこまでライセンス料を払わなければならないのか。MicrosoftのCAL(クライアント・アクセス・ライセンス)というライセンスでは、基本的にはアプリケーションサーバーに接続するクライアントの台数、あるいはユーザ数分だけ支払わなければならない。デスクトップOfficeとオンラインOfficeのハイブリッド環境で使いたければ、下手をすると2重にライセンス料を支払わなければならなくなる。そうはならないだろうが、オンラインOfficeも使いたければ、少なくとも従来のデスクトップOfficeのライセンス料の支払いは条件になるかもしれない。そうなるとオンラインOfficeしか使わない人の分も、デスクトップOfficeのライセンス料を支払わなければならないかもしれない。


 そもそもライセンス体系的にオンラインOfficeと組み合わせることには無理があるように思える。ましてやネットで接続してくる人数を固定化して、ユーザ数を確定することさえ無理なことに見える。技術的には制限をかけることは難しくはないが、そうした不毛な制限設定やライセンス管理に労力が奪われることの方がよほどの損失なのである。ユーザがライセンスの適用範囲を気にしながらネットでOfficeサーバーなりに接続するのも、おかしな話である。


 デスクトップからWebへのシフトであると同時に、デスクトップ時代のライセンス体系も、Web上では大きく変えざるをえないだろう。ネットサービスはすべて無償、オープンソースは万能、とまでは言わないが、もともとデスクトップ時代から矛盾を抱えていると思えるライセンス体系をネットにまで引きずるべきではないと感じる。そもそもハイブリッド環境という考え方そのものが過渡的なものであろう。デスクトップ時代のライセンス体系に代わるものをどうするかが、実は技術以上にMicrosoftのオンラインOffice「だけ」にとっては最大の課題であろう。