ネットブックと超薄型ノートPC

 Intelがさかんとネットブックではなく、超薄型(Ultra-thin)ノートPCを宣伝しているようである。話題性、消費者動向ともにネットブックに傾いている現状だけに、CPUメーカーとしての思惑もありそうだ。

「ネットブック以外にも選択肢はある」--インテルCEO、超薄型ノートPCを喧伝(CNET Japan)
インテルCEO:「CULV採用のノートPCが2009年のトレンドに」
超薄型ノートブック PC(Intel)

 ネットブックが話題といっても、それは市場の20%程度に過ぎない。他の大部分の需要は従来型ノートPCにあるというわけである。20%が大きい数字なのかどうかはわからないが、台数なのか利益率なのかで解釈も異なるだろう。つまりネットブックは出荷台数が多くても、メーカーにとっては薄利多売であまり利益にはつながらない。やはり従来型の利益率の高いノートPCの安定した売り上げが必要なのだろう。


 しかし、ユーザは価格破壊的なネットブックに飛びついた。超安値のノートPCという位置づけだと思ってのことである。WindowsやOfficeのパフォーマンスが問題となるのは、ネットブックが普及するようになってからのことである。ここにメーカーとユーザのネットブックの認識の違いがある。メーカーからすれば、ネットブックAtomSSDを適用できる、モバイル機器の新商品ジャンルになるのかもしれない。しかしユーザには、単に格安ノートPCに見えた。多少の制約があっても、景気の後退の状況もあいまって、コストがかからないノートPCの存在には大きな魅力があった。つまり初めからメーカーとユーザのネットブックの定義には「齟齬」があったのである。


 そのことが本来のノートPC市場に大きな影響を与えかねない。ネットブックが従来型ノートPCのシェアを奪い、なおかつ利益率を下げることになりかねない。ネットブックという新たな市場を獲得しようと、各メーカーはこぞってネットブックを発売したが、それが自らの首を絞めて、従来型ノートPCの売り上げを減らすことになりかねなくなっている。エンタープライズ市場はともかく、中小や個人の市場では特にそうだろう。


 ネットブックではパフォーマンス的にOfficeが使えないというならば、近い将来はOffice Web Applicationsのように、Webサービスの利用に特化することを促進することになるかもしれない。さらにWindowsだと重いということならば、そこでChrome OSが出番になる可能性もある。


 CPUを提供するIntelとしても、Atomしか売れなくなるようでも困る。そこでネットブックと従来型ノートPCの境界領域の超薄型ノートPCの選択肢を推しているのかもしれない。機能的には従来型ノートPCに近く、価格的にはネットブックよりは利益率を高くすることができる、いわば両者の中間の位置づけである。ユーザからすれば、従来型ノートPC、超薄型ノートPC、ネットブックと目的と価格帯による選択肢が増えることにもなる。


 ただIntelが言うように、超薄型ノートPCが良い選択肢になりうるならば、ノートPCの主流は従来型から超薄型へと移っていき、ノートPCといえば、それは機能も価格も超薄型ノートPCを指すようになるかもしれない。ネットブックの方は、よりクラウドの端末としての位置づけが明確化していくかもしれない。