YouTubeは著作権者に収益をもたらすか

 Googleの手前味噌的な部分と、著作権訴訟対策的な面もあるのかもしれないが、YouTubeによる動画投稿は元の著作権者に、結局は収益をもたらすことができると主張している。日本の著作権団体が聞いたら目をむきそうだが、果たしてどうか。

「YouTubeは著作権者に収益をもたらす」とGoogleが主張(ITprp)
I now pronounce you monetized: a YouTube video case study(Google Blog)

 例として結婚式のBGMに流れた曲のiTunesAmazonでの売れ行きが伸びたことを示している。YouTubeの映像が曲にとっては広告効果を発揮したことになる。また連動してiTunesAmazonからすぐに購入できるようになっていたことが大きいだろう。いくらその場で感動したとしても、いったんオフラインになると現実に引き戻され、やや冷めてしまって購入は思いとどまるかもしれない。「鉄は熱いうちに打て」ではないが、いいと思った瞬間に購入手続きができるネットならではかもしれない。悪くいえば衝動買いの危険性もあるということである。


 どうしてもネットに違法アップロードされてしまうと、「違法」と目くじらを立てるばかりでなく、その結果オリジナルのCD/DVDが買われなくなるということで、すぐに損害額を算定したがる。しかしもともと買おうと思っていない人達がYouTubeの投稿物を視聴したからといって、それは損害はゼロである。むろん初めからYouTubeだけで、目的のものを収集しようとする者もいるだろう。しかしそれは見つかるものもあれば見つからない場合もあるし、何よりYouTubeの動画をダウンロードしたりする手間もかかる。本当に鑑賞することが目的でそうする人の割合はそれほど多くはないだろう。その一部の人をネットユーザ全体のごとく疑惑を目を向けたり、監視しようとする発想自体が、某団体のように結局は自らのイメージを貶めて、首を絞めることにもなりかねないのではないか。結果、自分の家の中だけでダウンロードしたりコピーしたりするのも、何か違法なことをしているような気分にさせられるのも、とても著作権としても健全なあり方のようには思えない。


 とはいえ、YouTubeにアップロードされた楽曲、映像が、逆にオリジナルの売り上げを伸ばすことになりうるのは、YouTubeならばこそかもしれない。それだけユーザ数が増大し、各種のオフィシャルのチャンネルも増え、ステータスが上がったことによることが要因になっている気がする。YouTubeで偶然その内容に触れたことに刺激され、オリジナルを購入する人が何%かでもいれば、それは利益に繋がるかもしれない。それをYouTubeを見た人がすべてオリジナルを買うはずだった、と試算するのはむしろ馬鹿げている。ほとんど広告費なしで売り上げが伸びるようなものだろう。


 結婚式のBGMのような控えめな例ではなく、つい最近実感したしたのが、実はマイケル・ジャクソンの死後の曲の売れ行きである。追悼の意味で全世界で売れたのは当然だが、そこにYouTubeの効果はやはり大きかったと思う。マイケル・ジャクソンの死の直後からかつての名シーンや楽曲のアップロードが相次いだ。そしてその視聴はうなぎ昇りになり、世界中から多くの追悼コメントも付いていた。そして自分の知らなかったマイケルの多くの姿を見れたことに対する感謝のコメントも多かった。テレビのニュースや特集で見られたものは時間の制約もあり、ごく一部にすぎない。多くの人がYouTubeを通じて、かつてのマイケルのことを思い出だすことができ、あるいは初めて知ることができたのである。そしてそれがマイケルのDVDなどの購入に走らせたことは想像に難くない。実は自分もYouTubeで見て、その完全版を記念にとマイケルのDVD(英語版)をAmazonから買ったくらいである。案の定、Amazonでも一時的に在庫切れになっていたほどだった。マイケル・ジャクソンはアルバムの売り上げが世界一とはいえ、全盛期はレコードの時代の人である。それがDVDの売り上げも一気に増えたであろうことは、世界中でYouTubeの映像の効果とAmazonの存在も大きかったと思えるのである。


 Googleマイケル・ジャクソンの例を出すわけにはいかないだろうが、他にも今は絶版になっているであろう曲や映像の、DVDや曲のダウンロードによる販売をすれば儲かるのでは、と思えるものは古いものでは結構ある。YouTubeをうまくプロモーションの道具だと割り切って利用できれば、Googleが言うのもあながち的外れとは言えないかもしれない。