Winny開発者に逆転無罪判決

 1審では軽いが有罪判決をなされていたWinny開発者に対して著作権法違反幇助罪に問われていた2審裁判で、逆転無罪判決がなされた。これに対して、著作権団体は意外であり疑問だと不満を示しているが、さて、この裁判の争点はどうなのだろうか。

「有罪なら萎縮」訴え実る…ウィニー開発逆転無罪(YOMIURI ONLINE)
ウィニー開発者に逆転無罪、「著作権侵害勧めず」…大阪高裁
Winny開発者無罪は「意外であり疑問」とACCS(ITmedia)

 法律とか著作権法などは素人でも、この裁判は無理があると最初から思えていた。たとえれば包丁を使った傷害事件がしばしば起こったからといって、包丁を作る人が逮捕され裁判にされているようなものである。犯罪意識を持った犯人と明白な共謀をして、誰かに被害を与えたというものでもない。


 違法コピーやダウンロードをするというだけだったら、別にWinnyを使わなくても可能である。ただWinnyは不特定多数のネット参加者を引き付けるので、違法コピーの温床になりやすいというだけのことである。つまり便利なものは、犯罪にとっても便利であるというだけである。ネット上での著作権侵害が大きな問題となってきてから、その対策に何か大本の張本人であるかのようにスケープゴートにされたように思えてならない。利用者でなく開発者1人を有罪にできれば、一罰百戒で今後は誰もそのような試みをしなくなるだろうという、当局と著作権団体の思惑が働いていたように見える。もっとも被告も確か「著作権法のあり方に一石を投じる」というような挑発的発言もしていたことから、余計に有罪にすべきだという検察側の意識も強くなったのだろう。


 しかし裁判も2003年からだから、すでに6年が経過し、その間にネットを取り巻く周囲の状況は大きく変化したように思う。Winnyによる個人情報、機密情報の流出が相次ぎ、大きな社会問題化したことである。そのことから「Winnyを使うな」という言葉は、「違法コピーはするな」ではなく、「情報漏えいの恐れがあるから使うな」というセキュリティ上の深刻な問題を表すことになったのである。しかし情報漏えいは、Winnyの開発者が悪いという話にはならない。皮肉なことにWinnyは、ユーザ一人ひとりにセキュリティの意識と情報漏えいに対する責任の大きさを認識させることになったのではないだろうか。Winnyでは著作権侵害が、と著作権団体が自らの利害から主張するのもわからないではないが、今になってみれば社会的には小さな問題になったように思えるのである。