オバマ大統領にノーベル平和賞

 ノーベル物理学賞、化学賞、文学賞ときて、平和賞はなんとオバマ大統領だという。大統領や政治家が受賞することは何回もあったから不思議ではないが、大統領になってからあまりにも早い時期での受賞である。

欧州、米の協調推進に期待 オバマ氏ノーベル平和賞(NIKKEI NET)
(10/9)授賞理由全文

 ノーベル賞といっても平和賞は特別であり特殊な性格を持っているようである。米国ではゴア全副大統領やカーター元大統領が受賞している。いずれも米民主党である。他の国ではゴルバチョフ氏、金大中氏、ダライ・ラマ14世スー・チーさんなどがいる。日本では沖縄返還時の首相だった佐藤栄作がいる。いずれも平和に貢献し達成した、というものではない。むしろ難しい問題を抱えたまま受賞しているといった方がよいだろう。授与する側もどうやら受賞者を支援したいという意図があるようだ。


 オバマ大統領が「核なき世界」の演説をしたことから、特に欧州ではオバマ大統領に期待する向きがあり、その意図が受賞につながったという。つまり実績ではなく、政治や指導力に対する期待料として贈ったというわけである。そこが他の分野のノーベル賞と全く性格が異なるところである。ただ、過去にはノーベル平和賞を受賞した人が唱える通りには現実世界は動いていかないこともまた事実である。ダライ・ラマやスー・チンさんの置かれている立場を考えれば明らかであろう。日本での沖縄基地問題もそうかもしれない。


 しかし、ノーベル賞受賞者平和運動もまた関わりが深い。核の開発につながったアインシュタイン、日本では湯川秀樹、ライナス・ポーリングなどは化学賞と平和賞の2つも受賞している。科学に偉大な足跡を残した人には、特に核なき世界への社会的な責任もあるというわけである。さまざまな勢力に影響を受けやすい政治家とは違って、そこには大きな重みがあるのだろう。政治家であるオバマ大統領にとっては、国内外ともに難題ばかりである。考えようによっては難題に取り組む人にこそ、ノーベル賞が与えられるものだと見ることもできるだろう。オバマ大統領が米国だけでなく、平和に関して世界から尊敬と期待を受けていることを示した受賞であったといえるのだろう。