ネットブック売上高が3.6倍に

 この不況下にあって、というか不況下だからこそと言うべきか、ネットブックの売上高が1年で3.6倍にもなったという。他のジャンルのノートPCは軒並み売り上げ高は減少している。今やノートPC市場の主役はネットブックになったといってもよさそうである。

2009年Q2の世界ノートPC市場,ネットブック売上高が3.6倍に(ITpro)

 ネットブックの登場時は、上級ユーザのセカンド以降マシンとかLinuxユーザ向けと想定されていた。そこによくも悪くもMicrosoftがなかば強引にWindows XPをねじ込み、一般ユーザにも対象を広げたために、多くのユーザの関心が広がった。そこに金融危機後の不況である。PCでも、ノートPCは決して安い買い物ではない。10年前なら30万円、近年でも20万円近くの出費を考えなければならなかった。それがネットブックではいわゆる500ドルPCではないが、5万円前後くらいの価格で売り出された。現在では3万5千円くらいになっているだろう。事実、自分も店頭処分品だったが、2万9千8百円でネットブックを買った。昔は29万8千円くらいでノートPCを購入したこともあったと思う。10分の1の価格である。当時から考えれば夢のような話である。それも当時のノートPCと比較しても、スペック的には現在のネットブックの方が上である。現在のノートPCと比較してスペックやパフォーマンスに不満を言う人もいるだろうが、それは昔のノートPCを知らないからである。そして有料アプリケーションをインストールして使うのが、まだ常識だと思っているからであろう。


 ネットブックは従来のノートPC市場に影響を与えない、ユーザはスペックの高いノートPCをやはり求めるだろう、という論評もあったと思う。しかしこの調査の数字を見れば明らかで、市場の動向は一気にネットブックを押し上げてしまった。もちろんネットブックは単価が安すぎるので売上高の大きさそのものは、ノートPC全体の市場から見れば、まだそれほど大きくはならない。しかし、大多数のユーザが何を求め、どこに流れるかは明らかであると思える。もはや高価なノートPCにそのまま戻ることはないだろう。ノートPCの方がよりネットブックに近づかざるをえない状況だろう。今はアプリケーションを使う目的ではあまりよくないかもしれないが、アプリケーションに頼らなくてもよいような利用の仕方、またWebサービスの利用へと変化していくことになるだろう。具体的には、ネットブックではデスクトップのMicrosoft Officeを使わないようにすることである。すでにGoogle ドキュメントで済むことならそれでよいし、これからOffice Web Appsが出現して、それで十分ならそれでもよいということになる。いずれにしても、各種Webサービスの利用に加速がかかることになるだろう。それはノートPC市場全体の改変にもなるだろうし、クラウド普及の後押しにもなるだろう。ネットブックを軽んじて見ていた人の方が時代遅れになってくるかもしれない。


 「貧者の電子メール」が現在急速に普及を続けるtwitterなら、「貧者のPC」がネットブックだともいえるだろう。しかし「貧者のPC」をうまく使いこなすことこそが、実はネットの最先端を行くことになるということにもなりかねない。