無駄といわれる電子黒板とは何か

 何やら電子黒板というものが、麻生内閣時代の補正予算案の中で文部科学省主導の無駄遣いの槍玉として挙げられて話題になった。鳩山首相自らが、こんな無駄使いがあるかのように力説していたので、初めてそれがどんなものかを知った。

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 電子黒板といえば、もう昔のホワイトボードに書いたものを、その場でプリントアウトできるものばかり連想していた。昔それをオフィスでOLが使うシーンを「魔法の黒板」のようにCMでやっていたような、かすかな記憶もある。その意味では自分も遅れているのだろう。いまだに置かれている部屋もどこかにあったと思うが、ついぞ実際に使われている場面には出くわしたことはなかった。単なるホワイトボードとしてしか使われていなかったようだ。


 そのイメージがあったので、電子黒板といってもあまりピンとこなかった。そこで少し調べてみたら、何のことはない、タッチパネル式のスクリーンか大画面の液晶パネルである。役に立つかたたないかは使う人のスキル次第、提示するコンテンツ次第だろう。問題はこれを政府の景気対策として、バラマキの定額給付金のように全国の小中学校に大量に導入しようとしたことにある。1台が70万円以上することから「70万円」だけが一人歩きして、無駄使いの象徴のように話題にされただけである。


東京ITニュース 電子黒板 スクールニューディール構想


 確かに建物が近代的になり、教育機器もいろいろと進歩してきているのに拘わらず、授業の中心は相変わらず先生の書くチョークと黒板というスタイルは決して肺に良いとも思えないのに、もう何百年間続いてきたことだろうかと疑問を感じることはあった。しかしだからといって、ホワイトボードが完全にそれに取って代わったかというとそうはなっていないし、プロジェクタにPowerPointだけで授業ができるかといえば、そうにもなるまい。その理由は、まさに人が行う授業がアナログであり、単純なデジタル機器では置き換えられないということに根源的問題があるのだろう。それが現在の液晶モニターのタッチパネルでも、やはり完全解にはならないだろう。必要か必要でないかといえば、それは使う場面によるといえるし、背景としてデジタル教材が前提になければならないことを忘れてはならないだろう。タッチすることは簡単でも、あらかじめ用意しておくものを作ることが大変なのでは本末転倒だからである。


 経済対策の今後は、教育、医療、環境などへの投資が見込まれることは世界的流れだと思うが、だからといってこの手の電子黒板を1台70万円でバラ撒いただけで景気対策というのでは、やはり安易な発想としか思われてならない。おかげで使える分野や場面では有用かもしれない電子黒板の発想そのものまで、不当に貶められるのでは残念な感もある。