Linus Torvalds 氏インタビュー

 思わぬ写真を暴露された?Linuxの創始者Linus Torvalds氏の、Japan Linux Symposiumでのインタビューが紹介されている。

Linuxプロジェクトの利害調整は「面白さ」感じる--L・トーバルズ氏(ZDNet Japan)

 学生時代に興味を持って始めたLinuxの開発が、まさかこれほど世界規模のプロジェクトになろうとは本人も含め、誰も予想していなかったことだろう。TorvaldsがLinuxの開発を始めるきっかけとなる強い刺激を受けたのは、Tanenbaum教授の開発したMINIXである。こちらはUNIXの教育用としての明確な目的を持っていた。歴史は不思議なもので、MINIXではなくそれに影響を受けたLinuxの方が世界を席巻することになった。自分も20年近く前、PCで動くUNIXというものを追求していて、MINIXも実際に手に入れて動かしたこともあるので、非常に感慨深いものがある。

 ちなみにTorvalds氏とTanenbaum教授の関係は微妙で、特にLinuxカーネルのめぐっての議論はいまだに両陣営に分かれて続いているようである。


 Linuxの当初はネットワーク機能すら含まれていなかった。Linuxがコミュニティに公開されてから、いろいろな人達によって改良され、その中でBSD系からTCP/IPが移植された。当時はまだ、LinuxBSDのどちらがPCのUNIXの主流になるか、わからない頃であった。それがインターネットブームに乗って開発が加速されたのがLinuxであった。こうしてLinuxとインターネットは切っても切れない関係になり、その中からオープンソースという概念が生まれてきたともいえるだろう。


 その後、Linuxの多くのディストリビューションも生まれ、今はどれがどうだか把握しきれないほどである。ただ業務で利用するOSとしては、ある程度限られた種類になる。開発に利用する場合、コストも含めWindowsのような制約がない分だけ、自由なことができるのは大きい。そして今注目はクラウドにおけるOSとしてのポジションだろう。仮想OSとしてクラウドに自由に送り込めるのは、やはりLinuxである。Windowsだとライセンス数の問題、動作の問題、コストの問題と考えるだけでも、本来の技術的問題以上のものが多くかかってくるので避けたいものである。クラウド側OSがLinux、クライアント側のネットブックChrome OS(Linux)などという組み合わせが普通になってくるかもしれない。


 さて、Linuxでの新しいカーネルの問題が組込み系に限らずにあるのだが、以前Sunの担当者がしきりにTorvalds氏に近づいていたということがあった。オープンソース化したSolarisLinuxの関係として、将来的にLinuxカーネルSolarisになるのではないかという憶測もあった。Torvalds氏もまんざらでもないのではないかということだった。その後、SunはOracleに買収されてしまって状況は変わっただろうが、むしろそれだけにOracleのフリーハンドから離れ、SolarisLinuxを融合させることがあってもよいかもしれない。


 さまざまなプロジェクトが広がり、もはやTorvalds1人で制御できるものでもなくなったLinuxだが、まだまだ影響力は絶大のようである。特にオープンソースとしてのLinuxのビジネス利用がからんだ各方面の調整は、ほとんど政治問題ともいえるようで難しそうだが、あえて「楽しい問題」と前向きに捉えようとしている。Microsoftはじめ商用ソフトを持つ陣営が「極右」、FSFなどのGNUフリーソフトウェアを主張する陣営が「極左」とするなら、Torvalds氏などのオープンソースの立場は「中道」ともいえるかもしれない。現実の政治の世界に似て、今は中道が主流になっている時代ともいえるが、それはそれで舵取りの難しさがある。インターネットの将来とともにLinuxの立場は、これからどう変遷していくことになるだろうか。