HTML 5のビデオコーデック問題

 今週の大きな話題はiPadの発表と、YouTubeHTML5ビデオ対応が始まったことである。どちらも動画の将来に影響がありそうで、今のところ、どちらもFlashから離れようとしているようにも見える。iPadFlashに対応していないというし、また大きな問題はHTML 5ビデオのコーデックの標準をめぐることである。

HTML 5のビデオコーデック--YouTubeの選択に異議を唱えるモジラ(CNET Japan)

 HTML5ビデオはFlash Playerなどの動画再生プラグインを必要とせず、ブラウザネイティブで動画が再生できることになるので、動画がいっそう身近になりそうで良いことだらけのように思える。しかし事はそう単純ではないようで、動画特有のコーデックの問題がここでも尾を引いている。YouTubeHTML5ビデオに対応させたのが、Google ChromeIESafariだけで、Firefoxが対象になっていない理由がここにあった。YouTubeが対応したコーデックが「H.264」コーデックであり、Mozillaが推し進めているのがロイヤリティフリーである「Ogg Theora」というコーデックであるためだ。今後、GoogleOgg Theoraにも対応するようになるかどうかは、まだ明らかではない。


 ただでさえ、現状では動画のコーデックとはユーザにはきわめてわかりにくい。自分は人から「携帯で撮った動画をPCに取り込んだのに、なぜWindowsメディアプレーヤーで再生できないんだ」などと尋ねられたこともある。いずれにせよMPEG4をベースしている方言のようなもののはずだから、ユーザの常識とするには無理の話のようにも思える。画像のようにファイルの識別子だけで種類の違いが理解できるのならまだよいが、再生アプリケーションだけは入っていてもコーデックが入っていないと動画ファイルを再生できないことも、ままある。AVI形式のファイルや、ビデオカメラから取り込んだMPEGファイル形式の場合でもある。仕方がないので、動画形式の変換をしようと何らかのエンコーダに読み込ませようとしても「コーデックがありません」などとエラーが出て、読み込めなかったりする。下手にインストールできない公のPCなどだったらお手上げ状態になる。必要なコーデックを調べる「真空波動研」などが重宝がられるはずである。しかし本来、あまりに細かくコーデックが派生していることは、ユーザにとっては異常にも見える。そこで今後、動画を再生する標準のプラットフォームであるブラウザが、こうした面倒なコーデックの違いも自動的に吸収してくれるのが一番いいはずである。


 もしH.264が主流になるならば、MPEG団体に対してライセンス料が発生するのではないかというのがMozillaの主張のようである。ちょうどGIF画像形式に特許が生じたようなことになるのだという。仮にGoogleYouTubeに関して、H.264のライセンス料を支払ったとしても、それだけに留まらないことになるらしい。そんな面倒なことを知りながら、敢えてGoogleH.264を事実上の標準として推し進めるつもりなのだろうか。複雑そうな話で気乗りがしない。Blu-rayHD DVDの規格争いのようなもので、ユーザにとっても不毛なだけのように思える。複数の標準が存在するような過渡期はあるだろうが、わかりやすい決着を望みたいところだ。