iPadのコンセプトとは?

 それなりの衝撃を持って報じられたiPadの発表であるが、いつものことながら、さっそくネガティブな批評もある。出したのがAppleだから話題になっただけで、たいして革命的な製品ではないというものだ。そうした批判があるのも、Appleだからといえそうだ。

FlashもUSBもないiPad-Apple製品じゃなかったら売れない(ITmedia)
「大事なものが欠けている」-Adobe幹部、iPadのFlash非対応を批判
10 Reasons Why the iPad Would Fail Without the Apple Logo(eWEEK.COM)

 Appleの広告戦略やスティーブ・ジョブズの人気のことはともかく、批判の要点はFlashが使えない、USBが使えない、独自OSであるなどのようである。そもそもiPadMaciPhoneの延長と捉えるか、単なる電子書籍リーダーと見るかにもよるだろう。Appleとしては現時点では、ちょうどその中間のカテゴリーを狙ったともいえそうだ。だがそれが見る人によっては中途半端な製品と見えてしまうのだろう。Appleの製品戦略ともいえるし、製品に対するコンセプトともいえるだろう。OSからコンテンツに至るまでオープン化が進んでいる現在にあって、Appleのような商用路線が成功している例は稀である。ある意味、期待を持たせながら小出しに製品を現実化させている面もあるだろう。それがオープン路線を当然のように期待する人や、オールインワンの機能を期待する人には物足りなく感じるところかもしれない。


 しかしAppleは、これまで単に自社製品を売るためだけでなく、確実にそのジャンルの製品のコンセプトを確立し定着させてきたことは確かである。Apple以前にも同じものを先に考えた人や組織はあっても、それを普及させるには至らなかったといえる。技術だけでは大きな流行を創り出すことはできないのだろう。iPadにしろ、タッチパッドだけならすでにあった技術だが、電子書籍とネットをスムーズに結びつけるものはこれまでありそうでなかった。背景となる電子書籍ストアや電子図書館が必要だからである。


 だがiPadがきっかけとなって電子書籍市場がいけるとなれば、広大な世界が拡がるようにも見える。PCやネットをそれほどやらない人はいても、本も新聞も読まない人はほとんどいないからである。PCやスマートフォンを普通に使う人にとっては、それらの機能が不十分なことは不満に思うだろう。しかし書籍を読むことを中心に考えるならば、逆にPC的機能を制限した方がわかりやすいという商品コンセプトもある。むしろ現状でこのコンセプトに近いのは「電子辞書」あたりではないかとも思う。そして新製品が出ると、あたかもそれが半永久的に続くように思っているフシもあるが、これはまだ最初のものに過ぎない。電子書籍市場が大きくなってくると、また新たなコンセプトを加えた製品も登場してくるかもしれない。そしてそれはAppleの製品ではないかもしれない。そういう時代になったときに、AppleiPadはそのきっかけを作った製品だったということになる。それはiPhoneも然りなのである。