ゆとり世代から「さとり世代」へ

 ゆとり世代と言われる年代が20代くらいになってきたと思ったら、早くも次の世代は「さとり世代」だという。ネットというか2ちゃんねる発の言葉だというが、そもそもどの世代から見てのことなのだろうか。

ゆとり世代から「さとり世代」?(ITmedia)

 確かに日本が不況になり出したのが1990年代の初め頃からだから、今年高校を卒業する18歳以下の世代にとっては、生まれたときから不況が当たり前で育ったことになる。直接的には世の中の不況が影響したというより、親の生活状況によって育ちに影響しているといえる。親が贅沢をしてこなかった影響が反映されているといえるだろう。それを「悟り」と言うものかどうか微妙ではある。


 「さとり世代」はゆとり世代が進化した?世代と見るならば、その前にゆとり世代をあらためて考える必要もある。世間ではゆとり世代は、教育に失敗した世代のように決めつけている風潮があるが、この世代に接してみると必ずしもそうとも思えない。そう思っているのは、それ以前の何でもガツガツしていることをハングリーさとして良しとする発想ではないだろうか。その結果として、上の世代では自分の思い通りにならないと、いわゆる「キレる」者も多かった。ところがゆとり世代では、意外にもキレる人間は少ないように見える。わりと礼儀も正しい。最近の流行語では「肉食系」「草食系」という言葉が使われるが、ゆとり世代から草食系が多くなったように見える。古い世代から見れば「ハングリーさがない」とか「覇気がない」などと見られるかもしれない。ゆとり世代といっているのは、高校くらいまでの教育カリキュラムが緩いことだけを言っているようにも思える。しかし大学入試に対応するだけが本来の勉強でもないはずである。そして大学入試そのものも、少子化のせいで、あまり人を蹴落としてまで合格する必要もなくなっている。むしろ親の経済的負担の方が問題になっているくらいだろう。


 さて、そして現在は「さとり世代」が育ってきているのだという。子供の頃から、あまり大きな欲を持たないで育っているせいなのかもしれないが、ある意味「達観」している世代なのだという。その良し悪しはともかく、不況の中で親も達観した生活をしてきた影響もあるのかもしれない。それにやはりインターネットや携帯を含む情報化の影響も大きいのではないかと思う。子供というものは大人が思っている以上に、はるかに世の中の状況をよく知っている。自分の姪が祖母(つまり自分の母だが)からクリスマスに何か買ってもらえるというときに、店まで行っても何も欲しがらなかったという。後で親に「不況なのに、おばあちゃん大丈夫?」と言ったという。祖母は「おばあちゃんはお金持ちだから大丈夫」とは言ったものの、そもそも「お金持ち」の実感が分からない世代なのかもしれない。そんなこともあったので、自分も今年はお年玉をあげる時に「これは国債発行だから」と言ったくらいである。


 その祖母の若い頃は、時代が違うとはいえ、まさに世の中全体が貧しかったせいで、物を欲しがらない、なんとかやりくりする時代だった。みんなが貧しければ、貧しさも別に気にならなかったという。ただ、情報とか学ぶことには飢えていたのではないかと思う。そこが現在と違うところかもしれない。


 しかし現在18歳の世代で代表格には、石川遼菊池雄星のような人物もいる。彼らの言動がそれ以下の世代に大きな影響を与えている可能性もある。いつの時代もとかく下の世代のことを批判したがるのは世の常だが、自分としてはゆとり世代とその下の世代には、むしろ期待している。