H.264のライセンス無償期間を2015年まで延長

 YouTubeがHTML 5ビデオを導入したことから、にわかにH.264Ogg Theoraなどのコーデックの争いが表面化してきている。H.264には特許のライセンス料が伴なう可能性があることから、Mozillaが懸念を示し、オープンであるOgg Theoraの採用を支持している。MPEG団体がそれを見越してか、当面の間はH.264のライセンス料の無償期間を2015年まで延長すると表明した。これによってHTML5ビデオの動向はどちらに傾いていくことになるか。

「H.264」ストリーミングのロイヤリティ無料期間が延長(CNETJapan)

 ビデオのどのコーデックが主流となっていくかは、コーデックを開発して有している団体にとっては、ビデオ市場の広大さを考えれば、近い将来の大きな財産になる。画像のGIF形式のときように、急にライセンス料を主張しだせば、ネットの市場の反応は明解で、代替になる技術があるのであれば、そのようなヒモ付きの技術は採用されなくなるだけである。実際、GIF形式はもともと色数が少ないこともあって先では使われなくなるだろうという予想はあったものの、ライセンス料の発生から急速に使わなれなくなり、開発元自らが技術の利用の寿命を短くしたようなものだった。


 そうした先例もあることからか、猶予期間が5年間強ということになった。これは微妙な年数である。そのうちにH.264が市場を支配してくれればという考えだろう。市場に行き渡った後には、ビジネス用途なりか、広く薄くかでもライセンス料を請求できるような状況になっているという読みかもしれない。ここで性急にライセンス料を主張しだすと、GIFの二の舞か、むしろ市場を失う結果になりかねない。急いては事を仕損じるというわけである。しかし猶予とはいっても特許を放棄しない限り、ヒモ付きであることには変わりはない。将来的にそうした不安を払拭するためにも完全にオープンなコーデックを標準としようとする動きは必ずあるだろう。Googleだけの方針で決まるとも思えない。それはこれから5年間の動画市場がどう変遷するかにすべてがかかっているといえるだろう。5年間を過去にさかのぼれば、まだYouTubeが世の中で知られていなかったくらいの年数である。そう考えれば、2015年にはどうなっているかは皆目見当はつかない。今のコーデックの争いさえ、意味のないことになっているかもしれない。


 とはいえ、YouTubeFlashビデオを動画の主流に押し上げたように、当面は今度はYouTubeがHTML 5ビデオの標準化にどう対応するかに注目が集まるところである。H.264をこのまま標準として推し進めるのか、あるいは他のコーデックにも道を開くようにするのか。PCやWebのことばかりでなく、Googleはじめ多くの団体の思惑も複雑にからみあっているようで、誰もが見通しできにくいのではないだろうか。