4兆度の超高温状態を実現

 理研KEKの研究グループが4兆度という高温を実現したという。といっても加速器の中でのことで、エネルギーに換算すればということなのだろうが、いまいち想像がしにくい科学の話ではある。

4兆度・原子も溶ける超高温状態を実現 理研とKEKなど成功(ITmedia)

 そもそも「高温」とか「溶ける」という状態はマクロな話からきている話で、クォークとか原子・分子などよりさらにミクロの世界での「温度」というものがよくわからないからだろう。もともと温度というものは、大多数の原子・分子の運動から定義されるマクロの量だったはずである。そして温度と密接に関係しているのが、これもマクロの量の「エントロピー」というものだった。


 だから原子1個の固有の温度とかエントロピーとは意味のないものであった。せいぜい1個あたりの平均というくらいのものである。しかし素粒子レベルになると、その挙動を起こす「場」というものが重要で、そこに「温度」という概念が持ち込まれる。それはマクロにおける温度に似せた便宜上のものか、単なるアナロジーなのか、マクロの温度とも極限で繋がるものなのかがよく解らない。なので「原子が溶けてクォークと糊(グルオン)の集団になる」とか、ましてや「粘性ゼロの完全液体」と言ってもイメージしにくい。マクロの液体などは原子が溶けていないままで液体なのだから。数式を理解することと物質的イメージを持つことはまた別なのだろう。


 加速器の中の単なる高エネルギーの状態と、原子・分子(種類によっても違うだろう)が溶解する状態とは必ずしも同じではないのだろうか。むしろ溶けた状態でこそ、クォークと糊(グルオン)の集団が現れるので、そこで温度が定義できるようになるということなのだろうか。こういう話は一般記事を読むと、素人にはかえって解らなくなるものかもしれない。