北野武監督に仏芸術最高勲章

 いったいどうなっちゃっているの?と言いたくなるような、ビートたけしのフランスの芸術文化勲章の最高章(コマンドール章)の叙勲である。これ自身、映画のシーンかギャグではないかと思ってしまうほどである。それだけヨーロッパでの「北野武監督」の評価と、日本でのお笑いの「ビートたけし」のギャップは大きいようだ。

北野武監督に仏芸術最高勲章 芸術家としてパリで脚光(47NEWS)
北野武、フランスの勲章に喜ぶ「夢のよう」(SANSPO.COM)
北野武に仏「最高文化勲章」日本のたけし像と乖離?(J-CASTニュース)

 映画監督としては、ヴェネチア国際映画祭金獅子賞を受賞して以来、特にヨーロッパで数々の受賞を続けており、日本人としては黒澤明と並ぶ映画監督として知れ渡った感がある。これは映画界の人たちからすれば、驚きだったのではないだろうか。そうした功績から2005年からは東京芸大の大学院教授にも就任している。テレビではいつも通りにお笑いをやっているのに、いつ大学教授としての仕事をしているのだろうかと不思議になるくらいである。まあ近年は大学教授でタレントみたいな人も多いから、不思議ではないのかもしれないが。


 さてそのフランスの芸術文化勲章の受賞理由は映画監督としての業績ばかりではないようで、いつのまに制作しているのか、その美術作品の評価も対象のようで、パリの美術館で何ヶ月も展示されるのだという。テレビ番組の「たけしの誰でもピカソ」のために自分でも作品を造り出したのが始まりだろうか。奇抜なギャグ性が高いようなオブジェも多数のようで、日本ではあまり知られていないのかもしれないが、なかなか面白い。原点はお笑いにあるというものの、才能が豊富ということを多くの人に感じさせる。目先の笑いそのものよりも、笑った後にそのネタについて考えさせるようなところが、多くの知的な層にも長い間支持されてきたように思う。


 たけしのお笑いそのものはバイク事故以来、かつての勢いは鳴りを潜めたようにも思うが、映画監督としてはその後ますます活躍するようになったようである。しかし日本での映画の評価はイマイチのようではある。そう多く見たわけではないが、独特の感性であり、結末にモヤモヤ感が残る。監督であり主演でもあるから、どうしてもお笑いの方のたけしのイメージが強いせいもあるかもしれない。その点、ヨーロッパの人にはお笑い芸人のイメージはないから、映画の感性を受け取りやすいのかもしれない。映画の結末などもフランス映画やイタリア映画の感性と相通じるのかもしれない。それにしても芸術のフランスでとは、本当にギャグではないのかと思ってしまう。