Office 2010は6月17日発売

 Office 2010の日本語版パッケージが6月17日から発売される。ついこの間、2007が出てインターフェースの大幅変更で物議を醸したばかりと思っていたら、もう新バージョンである。この間に大きく変わったのは、ネットをめぐる情勢とそれにOfficeのようなデスクトップアプリケーションの先行きに「雲がかかった」ことだろう。

Office 2010は5月1日より提供開始、パッケージ版は6月17日に発売(INTERNET Watch)
「Office 2010」日本語版,6月17日発売 大幅値下げで普及狙う(ITmedia)

 Microsoftは何の会社かといえば、突き詰めればOfficeの開発、販売を独占的に手がける会社であるといえよう。もう20年以上もそれが続いているといえる。近年でこそ、Googleに対抗するネット企業のような位置にはいるが、ネット事業では利益が出ていない。あくまでOfficeで儲けて、それをネットなど他の分野に投資しているという形である。


 その経営基盤であるOfficeに陰りが見えてくるとしたら、Microsoftにとっては存亡にかかわることになってくるだろう。デスクトップアプリケーションの分野では、ライバルを徹底的に叩き衰退に追い込んだことによって、その独占的利益を得ることになった。ところがその地位が、ネットのWebアプリケーションによって揺らごうとしている。Goolge Docsに代表されるようなオンラインOfficeの登場の影響である。Google Docsがそのままで現在のOfficeを代替することにはならないだろうが、問題はWeb2.0のブームに始まるアプリケーションはすべてWebに移行していくという大きな流れである。そしてここ3年ばかりのクラウド化への流れによって、それは決定的になったといえる。アプリケーションもユーザのデータもすべてクラウドに置くという形になると、もはやローカルPCにアプリケーションをインストールする必要さえなくなる。DVDを箱に詰めたパッケージのライセンス商法は成り立たなくなるということである。


 Microsoft自身もクラウドの覇権をGoogleAmazonなどと競うべく、最近は大規模にクラウドに投資している。Windows LiveのSkyDriveの1ユーザの容量が25GBということを見るだけでも、その力の入れようがわかる。そしてOffice 2010ではMicrosoftにとっては禁断のOfficeのWebアプリを提供することになる。従来通りのデスクトップのパッケージはそれに先駆けての発売ということになる。


 パッケージの方の宣伝は従来通りとあまり変わらないといえるだろう。Office 2007で大幅変更したインターフェースは踏襲されるだろうし、微妙にEditionの差を付けて余分なソフトが入っていたりいなかったりも相変わらずである。ましてやかつて評判の悪かったヘルプのイルカの再登場だの、パソコン教室よろしくのような冴子先生だとか、はっきり言ってどうでもよいような機能である。


 いくらパッケージの宣伝を強調しても、市場の最大の関心はやはりOffice Web Appsの登場だろう。機能制限は付くのは当然だろうが、これがどこまで使えるものとなるかどうかである。MicrosoftとしてはOffice Web Appsでユーザを釣っておいて、それに物足らなさを感じたユーザがパッケージを購入してくれるということを目論んでいるのかもしれないが、一歩間違えばパッケージの売り上げを減らす逆効果になりかねない。Web版を諦めてパッケージ版に向かうというのは、まさに時代の流れに逆行しているからである。


 今夏に登場するであろうといわれるOffice Web Appsも出揃った上で、今回のOffice 2010の評価も定まることになるだろう。デスクトップ版での独占的利益を継続したいMicrosoftも、自らもクラウドに乗り出さなければならない状況で出現するOffice Web Appsは、諸刃の剣でパッケージを衰退させる自己矛盾を抱えることになるかもしれない。そしてそれこそが、Google Docsを登場させた効果だったということになるかもしれない。