電子図書館と出版

 電子図書館ということが言われて久しいが、国会図書館も「電子図書館構想」への取り組みを進めていくという。国会図書館といえば、膨大な出版物を所蔵し、稀本を見つけるのに訪れるといったイメージがあったが、それも過去の話となっていくことだろう。

「電子図書館」は出版業界と共存できるか(ITmedia)

 その動きに出版業界が「本が売れなくなる」と懸念を示しているという。だが、やや的外れな話のように思える。そもそもデジタル文書化やネットの進歩によって、出版はジリ貧に追い込まれつつある。国会図書館電子図書館化したとしても、それが出版が圧迫される大きな要因ではない。大きな時代の流れなのである。昔の話でたとえれば、テレビの普及によって新聞社が新聞が売れなくなると、NHKに懸念を示すようなものである。紙メディアが完全になくなることはないだろうが、大量に紙を消費する出版は縮小を続けていくことだろう。それに国会図書館のようなところが目指すのは、過去の書籍の保存なのであって、絶版になって久しく古本屋を巡ってもなかなかお目にかかることができないような本であろう。出版社は目先で売れる本しか出版したり復刊したりはしないから、国会図書館などとは競合する面は少ないだろう。むしろ売れないとすぐに廃刊になったりするので、決して読者の要望に応えているとは思えない。


 出版業界ももはや紙の本で、かつてのような景気が戻ってくるとは考えていなだろう。むしろiPadの出現に見られるように、デジタル文書を出版することにビジネスモデルを追求していくしかないだろう。極端な話、デジタル本のサイトそのものをWebサービスクラウドサービス化するようなことを考えた方がよいのかもしれない。紙の本が欲しい人はそこから受注生産のようにすればいい。そうすれば売れ残りの返本などということは避けられる。ソフトウェアもオープンソースが標準的になり、それに付随するサポートなどが有料になっているように、出版サービスも活字そのものではなく、周辺のサービスを有料化できるようなビジネスモデルを考えていくべきであろう。iPadの出現はそうしたことを促しているような気がする。