UNIX訴訟に最終判決

 もう何年か前に取り上げた話題の、UNIX著作権をめぐる裁判が最終決着をした。もともとUNIXを権利を有するとしていたSCOが、Linuxなどがその権利を侵害しているとしてIBMなどに訴訟を起こしていたのが最初であった。ところがSCOにUNIXを譲渡したというNovellが、著作権は有しているということで最終判決となった。

Novell対SCO訴訟、最終判決でNovell勝利(ITmedia)
「UNIXの著作権はSCOにあり」の控訴裁判決(2009.8.26)

 足掛け10年にも渡った裁判だったが、もはや現実の時代の流れからはとっくに取り残された問題になっていた。今さらUNIXの権利を主張したところで、「純性の」UNIXを利用しているシステムなどは存在しなくなっている。UNIXクローンといえるLinuxにコードが盗用されているなどというのは言い掛かり以外の何ものでもない。SCOはIBMでも訴えればあわよくば金を取れる団体も出てくるのではないか、と淡い期待でもしたのではないだろうか。


 そもそも元々フリーだったUNIXの権利を譲渡したりするところから歴史の誤りだったように思う。また権利を手に入れた側は、UNIXが何であるのかを理解できていなかったたとさえ思える。AT&Tから特定企業へと譲渡された段階で、UNIXユーザのUNIX離れは始まったといえる。ヒモ付きのOSなど誰も望んでいなかったのだろう。Berkley UNIXから発しているSun OSは独自にSolarisへと発展させる。これもヒモ付きとはいえるが後にSolarisLinuxに影響されてかオープン化している。ところがSunそのものもOracleに買収されたことにより、かつてのUNIXワークステーションの時代は事実上終焉したといえる。


 そして現代のUNIXといえば、もはやLinuxがその地位を得ているといってよい。けれどもLinuxは決してUNIXと呼ばれることはない。UNIXの権利、商標がくり返し譲渡されてきたせいである。SCOなどは現在のLinuxの立場にSCO UNIXがなって、世界のサーバー市場が独占できていたかもしれないなどと非現実的なことを想像したのだろうか。ユーザ側からみればUNIXの名前を使えなくした、はた迷惑な企業としか映らなかった。譲渡したとされるNovellUNIX著作権だけは有していた、というのもおかしな話ではある。そのNovellももはやUNIXは関係がなく、現在ではSUSE Linuxを提供する立場となっている。


 SCOは長い裁判中に既に経営破綻をしている。あれだけ優秀なソフトウェアであるはずのUNIXの権利を有していたにも拘わらずである。そこが、UNIXとは何だったかをはき違えたことの結末であったように思える。