W杯、日本8強ならず

 日本のW杯が終わった。延長の末のPK戦で、あと少し「運」が足りなかったようだ。それでもW杯前の下馬評を考えれば、予想外の結果と注目を浴びることになった。ベスト8には届かなかったが、やはり新たな歴史を作ったといえるだろう。

岡田監督「もう1試合させてやりたかった」(SANSPO.COM)
PK外しうつむく駒野、誰が慰めたか…
森本「起用されなくて残念」伊紙に語る
俊輔外しの賭けに勝った岡田監督…苦渋の決断明かす(スポーツ報知 6.26)

 試合内容的にはそれぞれドラマがあったが、それはサッカーに詳しい人もそうでない人も多くの人が論じているだろうから、ここでは選手起用という点でいくつか思うところを書いておこう。


 今回はWC期間に入ってから、急遽戦術を変更して守備重視に切り替えて、それがズバリ当たって結果も出したため、事前の評価を覆す結果となった。戦術の変更はメンバーの変更を意味する。それも代表選出後からの変更である。特に守備重視の結果、一番出番を失ったのはFWとして選出された選手ではなかったか。本田が1トップといっても、本田は元来MFの選手である。最大の決断は、不調というかチーム内で機能しなかったためか、中村俊輔を外したことだった。極論すれば中村一人を外したらチームの血のめぐりが良くなったかのようである。それまでは攻めと守りが分断されていたかのようである。そうなると、エースナンバー10を着けた中村だけがブレーキだったのかということになる。


 そしてそれ以外にも代表に選ばれたにも拘わらず、一度も出番がないままに終わった選手も多かった。サッカーの1試合での交代枠は3人しかないこともあるが、いわゆる補欠というよりトップ選手だらけなので、控え選手の投入はなかなか難しい。選ばれただけで満足という選手はいないだろう。したがって誰を出場させるかというより、誰を出場させないかの方が大きな問題でありそうだ。選手からすれば、飼い殺しのように出番が全くないのならば、初めから代表に選出されなくてもよかったということになりかねない。ベッカムのように怪我のため出場できないためにチームのサポート役に回るというのでもない。


 出場経験があるベテランはまだいい。PKを外した駒野の気持ちはいかばかりかと映像を通して思えたが、出場して失敗する機会さえ与えられなかった選手の方はもっとそう思えるのである。個人的には最終戦では延長にもなったのだから、守備重視で外されていた森本を短時間での突破力に期待して投入して欲しかったと思う。次回に繋がるメンバーに少しでも経験させてほしかったという意味もある。


 結局、今回日本が他国に優っていたのは「自己犠牲」をしてでもチームの和を優先する精神ではなかっただろうか。