コンピュータ将棋の名称は「あから2010」

 情報処理学会名で日本将棋連盟に挑戦という名目で話題のコンピュータ将棋の名称が「あから2010」に決まったという。実体は東大の676コアを持つXenonクラスターを利用したもので、4つの将棋ソフトの合議制で次の1手が算出されるそうである。

女流王将vs.「あから2010」、対局詳細決まる 大盤解説も(ITmedia)
トッププロ棋士との特別対局「清水市代女流王将vs.あから2010」..(情報処理学会)
大方広仏華厳経の巻第四十五、阿僧祇品第三十(Key:雑学事典)

 名前の由来を調べてみると、チェスの人間のチャンピオンと対決した「ディープブルー」などより?なかなか意味が深い。雑学事典(Wikiも参照)によれば『大方広仏華厳経』の中に「漢数詞」というものがたくさんあり、こんな天文学的数字をはるかに超えた数字を、大乗仏教ではいったい何に使ったのかと思えるようなものである。まったく阿修羅みたいな数である。「大方広仏」は時間も空間も超越した絶対的な存在なのだそうである。その中に、


「阿伽羅」  107×25 = 10224


とある。ちなみに、将棋の1局で可能な平均の手の数は、初手から詰みまでの平均手数115手、1つの局面あたりのルール上可能な手の種類の数の平均が80通りであることから、

     〜 80115 ≒ 10220


と推定評価されている。これに最も近い漢数詞が「阿伽羅」だというわけである。なお最も大きな漢数詞とは、

「不可説不可説転」  107×2122  = 1037218383881977644441306597687849648128


だそうである。Googleの名前の由来であるgoogol(10100)なんてものではない。日本語で大きな数といえば無量大数」(1068)までしか聞いたことがなかったが、漢数詞に至ってはこれはもう何が何だかわからない世界である。案外これからは、仏教用語からコンピュータ用語へと変遷していくかもしれない。


 さてクラスターはよいのだが、4つの独立したプログラムの合議制というのはうまく働くのだろうか。4つのプログラムのうちの互いの対戦成績上の最強プログラムに対して、明らかに合議制のプログラムの方が、何割かでも強いことは示されているのだろうか。将棋の言葉で言えば「香車1本強い」とか「角1枚強い」である。今のコンピュータ将棋の強さでは、香車1本強くなったとすれば相当な進歩である。あるいは、1つの最強プログラムが導き出した手に間違いがないか、他の3つのプログラムが検証を加えるという形なのだろうか。4つのプログラムの単純多数決(2対2の時はどうする?)だけでは、1つの最強プログラム以上には強くはならないような気もするが(むしろ弱い3つのプログラムに多数決で足を引っ張られる?)、どうなのだろうか。それも実戦の場数を増やしていって初めて検証可能になるのだろうか。


(追記) 2010-10-11 あから2010が清水女流王将に勝利