自治体のその後のOpenOffice.org導入

 だいぶ以前に話題にした自治体のOpenOffice.orgの導入だが、現状はどうなっていることだろう。久しぶりの記事を目にしたのでコメントしておこう。

自治体に広がるOpenOffice.org(ITpro 8.26)

 自治体にますます広がるOpenOffice.orgと言いたいところだが、案の定というか、なかなか採用に踏み切る自治体は増えていないというのが現状であろう。タイミング的には全国で電子自治体化や自治体の合併などが相次いだ時期だけに、それに応じた業務システムの改革、合理化があってもしかるべきだっただろう。そして国家財政、地方財政の赤字がこれだけ騒がれる時代なだけになおさらである。


 一方、ここ数年でIT、ICTの変化、ネットの情勢がまた大きく変動している。どうしてもお役所はそうした変化からは何世代か遅れている感が否めない。「お役所仕事だから」と言ってしまえばそれまでだが、地方が疲弊しているという今こそ、自治体自らからが、ICTやネットでも範を示して地方の活力に結びつけるべきだと思えるがどうか。別にOfficeソフトだけでどうなるというものではないが、そこにはオープンソースソフトウェアやネットを社会に役立てるという姿勢があるだろう。


 さて会津若松市が典型だったOpenOffice.orgの全面導入は、多くはその後もいくつかの自治体で試みられているようである。市単位のところがほとんどだが、県単位では山形県が導入の検討を行っているようである。その間にネットの情勢は、単にMicrosoft OfficeOpenOffice.orgで置き換えるだけという単純なことでもなくなっている。Google DocsのようなWeb版のOfficeの登場である。Office文書はファイルの互換性さえあれば、どんなOfficeソフトでも編集できるはずである。


 現にGoogleGoogle Appsの利用方法として、新しいMicrosoft Officeにアップグレードせずに、古いバージョンのままでGoogle Docsと組合わせて利用することを提案している。同じように考えれば、同じODF形式の文書として、OpenOffice.orgGoogle Docsとを組み合わせた利用もできるはずである。特に組織内部だけであれば、少なくとも内容の編集段階では簡単にネットで共有、共同編集が可能なWeb版のOfficeはきわめて効率の良い道具となる。外部に正式文書として公開するものだけ、デスクトップ版のMicrosoft OfficeなりOpenOffice.orgなりで文字装飾などの「清書」をすればよい。もっといえば、Webから必要なテキストを流しこむだけで定型文書のPDF文書が自動的に出来上がってしまうようなシステムにしてしまえば、職員全員がOfficeを習熟している必要すらなくなる。


 Web上で文書作成もできて蓄積可能なシステムは、クラウドに繋がる話である。いずれ「自治体クラウド」のようなプライベートクラウドが計画されることになるだろう。そこまで見据えて次期業務システムを考えれば、単なる有償か無償のソフトかなどというせせこましい問題ではなくなるだろう。