インド政府が通信の監視を要請

 インターネットは容易に国境を越えてしまうことは、インターネット登場以来、当然のこととして認識されてきた。ところがこれだけ社会との関わりが深くなると、国レベルでの大きな問題も発生してきている。中国からのGoogle撤退はまだ記憶に新しいが、今度はインド政府が無理難題を要請してきている。

インド政府,グーグルやスカイプもターゲットに-米報道(CNET Japan)

 RIMのBlackBerryに始まりGoogleGmailSkypeにも要請するといい、その対象は広がりそうだ。要はインターネットを国の監視下に置きたいということだろう。理由としてはテロ対策のためであり、いざという時にサーバーにも介入できるできるようにせよ、とのことである。普通は暗号化されているから通信の秘密が守られ、機密情報も漏れないから安全ということになるが、テロリストにも暗号化された通信が利用されるのは国にとっては危険だという、あべこべの話になっている。


 そこで当局がすぐに介入できるように、物理的にもサーバーを国内に設置せよというわけである。先進国というか先進国企業にとっては受け入れがたい話ではある。むしろ治安面を考えれば、現地にサーバーを置くことの方が物理的に危険とさえ考えられるかもしれない。しかし国家からの要請なので、なかなか対応が難しいことになりそうである。下手をすれば、中国のときのGoogleのように撤退せざるをえなくなる可能性すらある。小さな国相手ならそれもありうるかもしれないが、中国にしろインドにしろ、世界から見れば何割かの人口を有する国であるから、マーケット的にも簡単にはいかない。まさに技術的問題よりも政治的問題である。


 話は違うが、自国にサーバーがあればいざという時に安全という発想は、クラウドにも付いて回る。すべてクラウドに依存するようなシステムにしてもよいが、肝心のクラウドのサーバー群はすべて海外にあるとなれば不安だというものである。回線のスピードが遅いなどという技術的な問題ではない。手元かあるいは国内にサーバーがあれば、緊急時でもなんとか手を出せるかもしれないという心理である。これもクラウドの本質を理解していない話にも思えるが、物理的にサーバーを所有しているということが、インターネットで主導権を握っているというシンボル的意味合いを持つことになるのだろう。案外インドの主張もテロ対策を口実に、サーバーを設置させることで自国がインターネットの中核をなしているというステータスがほしいのかもしれない。