国内プライベートクラウド市場の成長

 国内のプライベートクラウド市場が、この4年ほどで年率30%近くの成長を続けるという見通しがある。Web2.0の時代から続き、すっかりクラウドはITの世界の中では定着した概念になったように思える。ただし、いざ自分の組織での話となると、まだまだ見通しは立っていないケースは多いと思われる。そうした組織も何らかの形でクラウドに投資をしていけばという、やや楽観的な市場予測であると思える。

国内プライベート・クラウド市場、2014年まで年率30.7%で成長(COMPUTERWORLD.jp)

 クラウドといっても、AmazonGoogleMicrosoftなどが提供するパブリッククラウドのことではない、インフラを持つ企業や顧客を抱えるデータセンターなどが導入するクラウドが主である。かつてのインターネットがパブリッククラウドに例えれば、プライベートクラウドイントラネットに相当するだろう。イントラネットの再構築に当たるのがプライベートクラウドと見ることもできるだろう。自前のインフラの中にデータを保持しているだけに、自己管理、運営をしているという安心感が経営的には(セキュリティ的にはともかく)あるだろう。パブリッククラウドの最大の心理的抵抗は、内部の機密データまですべてを外部のクラウドベンダーに預けてしまってよいのか、ということであろうから、データセンターの発展と考えれば、組織的には通りやすい話にはなる。


 クラウド初期の頃は、5つほどのクラウドベンダーにすべて集約されてしまって、既存のデータセンターなどは潰れるという予測もあったのだが、近い将来的には紆余曲折はあるだろうが、プライベートクラウドセンターのように衣替えしていくことになるかもしれない。もっともクラウド技術に対応できないデータセンターはそれなりに淘汰されることはあるだろうが。


 どうやらパブリックとプライベートクラウドは対立、競合するものではなく、共存していくものであることが、次第に認識されてきたようである。当初の黒船襲来のようなクラウドの認識からは、だいぶ理解が進んできたのかもしれない。国内にとってのクラウド時代への1つの転換点では、以前から言われているAmazonクラウドの東京データセンターの稼働ではないかと見ている。今秋といわれていても、なかなか正式発表はないようだが、開業には既存のデータセンターに間借りするといわれている。だとすれば、これはパブリッククラウドプライベートクラウド共存を意味することになるだろう。もっともAmazon自体もプラウベートクラウドのサービスも始めているが、やはり主力はパブリッククラウドには違いない。


 Amazonが進出してくることで、ますますクラウドに参加する顧客の獲得競争は激化するだろう。大企業のエンタープライズユーザばかりではなく、むしろ500万円以下でクラウドのインフラを持とうとする中小やベンチャー企業も増えてくると予想しての、クラウド市場の広がりである。既存のシステムよりはコストがかからず、かつ安定した運用が可能であることが、プライベートクラウドが求められる理由となるだろう。ただクラウド市場が活発化するには、それ以前に日本の景気が上向くことが必要であろう。こればかりはクラウドばかりで押し上げられるものではないだろう。クラウドはあくまで仕事の手段であり、環境である。