「Linuxに関する10の誤解」の誤解

 何か、10年以上前くらいに聞いたような議論なのであるが、現在の「特集」ということになっていたので取り上げてみる。海外の記事だけにLinuxを擁護したい余り、「誤解」に対してやや感情的なトーンになって「誤解」している向きもなくはない。初心者向けかもしれないが、やや意識が遅れているのかもしれない。

Linuxに関する10の誤解--コマンドラインが必須..(ZDNet Japan)

1.自分でデバイスドライバを書かなくてはならない
というより、自分でデバイスドライバも書けるのがLinuxというか、昔からのUNIXの機能ではある。Windowsに接続する各種のデバイスとスムースにLinuxで接続できるかは、10年前ならともかく現在ではあまり問題にならなくなった。USB機器が普及したことも要因にあるだろう。


2.Linuxを使うにはコマンドラインを知っている必要がある
これはLinuxをサーバー用途で使う限りは必須である。デスクトップクライアントとして使う時でも、結局コマンドで実行した方が合理的な場合もある。バックグラウンドでプログラムを実行したいような場合などがそうだろう。コマンドの方が命令と実行内容が1対1でわかりやすいともいえる。コマンドを敬遠したがる人は経験がないためである。最近はWindowsコマンドプロンプトを使ったことがないという年代の人も増えてきたことは確かである。


3.ゲームがないのでLinuxは成功しない
何に使うかは人の自由だが、ゲームにしても従来のインストールして使うデスクトップ型のものから、ネットワーク対戦型、いわゆるネトゲの方が主流となってきている。ネットの方がいろいろなゲームの可能性が広がる。そのゲームのサーバーになりうるのがLinuxであるともいえる。近い将来的にはゲームクラウドが流行ることだろう。ゲームを提供する側からすればそのベースはLinuxである。


4.オープンソースだからといって、そのソースが安全だとは限らない
商用ソフトウェアよりオープンソースソフトウェアの方が優秀であることは、もはや時代の趨勢である。ただオープンソースソフトウェアを利用する場合、どこがサポートしてくれるかというだけである。個人の利用は無償だけに自己責任だが、組織での利用は有償のサポートをしてくれるメーカーなども増えてきた。それがLinuxのビジネスモデルである。無償なのに自己責任を取るつもりがない人は、オープンソースを使うべきではないだろう。


5.LinuxではMicrosoftの文書は開けない
Microsoft Officeの代替にOpenOffice.orgを使うという発想自体、現在では古くなりつつあるように見える。Google DocsなどのWeb上のOfficeをうまく他のツールと組み合わせて、目的の作業の実行するということになるなるだろう。Microsoftも、現在OpenOffice.orgの権利を持つOracleも、Googleを追うためかWeb版のOfficeを出すようになっている。クラウド化を象徴することでもある。


6.Linuxのデスクトップは難しくて使いにくい
Windowsにだけ慣れてしまっている人にとってはLinuxのデスクトップ(GNOMEKDE)ばかりでなく、Macのデスクトップだって十分に難しいと感じるだろう。これこそ慣れだけである。最近はGNOMEが主流で固定されてきた感があるが、昔はいろいろなデスクトップが選択できて、変えるたびに雰囲気ががらりと変わってとまどったものだ。同時にLinuxをやってみると、デスクトップなんて単なる「見せかけ」に過ぎないことがよくわかる。だから変わらないコマンドの方が重要なのである。GNOMEWindowsにそのウィンドウの感覚を似せたものと思われるが、Windowsに慣れすぎた人をターゲットにしているようではある。


7.Linuxは他のOSと相性が悪い
問題なのはOS同士の相性ではなくて、OSのネットワークに対する相性である。Linuxは初期の頃はともかく、ネットワークOSともいえるだけに初めからネットワークへの親和性がある。Windowsはもともとがデスクトップのスタンドアローン用OSであるからネットワークへの相性はあまりよくはない。それがLinuxと相性がよく見えない理由である。少なくとも現在は、1つのHDDにWindowsLinux共存してインストールして相互にやりとるするようなことは無駄であると感じる。


8.Linuxにはアプリケーションが少ない
これもゲームの項と同じことである。WindowsはデスクトップアプリケーションのためのOS、LinuxはネットワークのためのOSである。世の中はアプリケーションもゲームもクラウドに向かっている。


9.Windowsは世界で他のどのOSよりもPCで使われている
これは証明するまでもなく、その通りだろう。 だがネットワークが主流となってはクライアントがWindowsである必要がなくなってきている。PCではなく、スマートフォンタブレットPCの現状を見れば明らかである。スマートフォンタブレットPCでもやはりWindowsが主流になると考えている人はどれだけいるだろうか。PCにおいてもブラウザを利用することが主であれば、OSそのものはPCを起動されて周辺デバイスに接続するくらいしか意味がなくなってくる。Chrome OSがそのことを示してくれるだろうか。


10.Linuxにはハードウェアサポートがない
これも10年以上前くらいの話か。IBMやHPだとか、大手メーカーでは早くからLinuxのサポートをしてシステムを組むケースは多い。問題にしているのは、個人用にプリインストールして保証してくれるメーカーが少ないということだろうか。個人は現状ではWindowsで型落ちしたPCにLinuxをインストールしてPCの延命をはかるというのがもっぱらだろうか。Linuxのインスールも周辺機器の接続もずいぶんと楽になった。ただ、PCの保証期間も過ぎているし、LinuxだしでPCメーカーのサポートが得られないのは当然である。