IBMのコンピュータが人間とクイズで対決

 「Watson君がクイズで人間に勝利」というと何のことかと思ってしまうが、IBMのコンピュータ「Watson」のことであるという。Watsonの名前はシャーロック・ホームズでもなく、DNAの博士でもなく、ゴルフプレーヤーでもなく、IBMの初代社長のトーマス・ワトソンに因んでいる。

IBMのコンピュータ、クイズ対決の練習戦で人間に勝つ(ITmedia)
IBMのコンピュータ「Watson」、テレビでクイズ王と対決

 IBMのコンピュータが人間に勝利というと、チェスで人間の世界チャンピオンと対決したディープブルーが思い出される。こちらはIBMのシンボルカラーがブルーであることによるのだったろう。それ以来の「対人間」の話題といえるかもしれない。そして人間と対峙しているのは「人工知能」としての性能を試しているためである。昔と比べれば「人間に近づく」というより「人間を超える」ことが目標となっているようだ。


 ディープブルーがゲーム解決の「探索」が問題であったとすれば、Watsonは「自然言語処理」が問題となっている。単にクイズの正解を当てるというだけなら、百科事典的なデータベースを持つコンピュータなら勝って当たり前のようなものだが、クイズの質問内容を正しく理解するところから、まず問題になる。クイズだけにストレートな質問ではなく、何らかの「ひねり」がある質問になるのだろうが、それをコンピュータが正しく理解した上で、必要なデータを検索して正解を構成することができるかどうかなのであろう。いわゆる「意味論」的解釈の問題である。これは人間同士の会話を理解して、人間と同じような会話ができることにもなる。これは目新しいことではなく、もともと人工知能が昔から目指していた目標ではある。ただ日常会話のレベルはともかく、やや専門的な会話や「含蓄」のある会話などは、どこまで可能かといえば、これまで地道な歩みを続けてきたことに違いない。コンピュータの最古参といえるIBMだからこそ、そうした基礎研究を積み上げられてきたともいえるだろう。


 その成果をデモとして効果がある、人気クイズ番組への参加としたのだろう。日本でいえば、クイズ「タイムショック」にコンピュータが出場して、人間のチャンピオンに挑戦するといったところだろうか。英語でのクイズでコンピュータが成果を出せるとしたら、今度は日本語でのクイズに対してはどうかということになる。日本語の方が母音がはっきりしているので質問は聞き取りやすいが、漢字の「同音異語」と文節区切りのあいまいさがあるので、どうなるかのというところだろう。たとえば「にわにはにわ、うらにわにはにわ、にわとりがいる。さて鶏は合計何匹?」などというクイズに瞬時に答えられるようになるのだろうか?