小学校にiPadを配布

 ICT活用教育の推進として、小学校のモデル校にiPadが導入されるそうだ。教育分野の情報化だというのだが、さてどんなものか。電子書籍リーダーとしての目的以外は、可能性はあるものの、まだタブレットPCの活用方法は確立していないような気もする。

ソフトバンク、小学校にiPadを配布--教育分野の情報化..(CNET Japan)
iPad:小学校の全校児童に配布 15日、公開授業(毎日jp)

 大学生くらいならば、実習用、研究用として、新しい機器はどんどん導入しても構わないだろう。それはあくまでもテーマを扱う上での、その時点での「道具」に過ぎないからである。進歩が速いから、大学時代に使ったハードウェア、ソフトウェアが就職した頃にそのまま使えるわけでもない。大学生には、むしろ未知の問題や仕事を示されても、自力で使える道具を使いこなしながら、それに対応、解決していける能力を身につけることが必要だろう。


 しかし、まだ思考能力が形成される過程にある小学生くらいでは異なるだろう。言語であれ、機械であれ、最初に経験したものが後々の精神形成に大きな影響を及ぼす。そこにiPadでよいのかという疑問はある。確かに便利な物であり、触っても楽しいだろう。子供ならばゲーム感覚になるだろう。ただし、そこで学ぶべき主なることは「読み、書き、計算(そろばん)」であるはずである。そこで従来からの教科書、ノート、文房具の活用との折り合いはどうなるのか。作文であれ算数であれ、やはりアナログ的に手で書いてものを考えることが、この年齢期では重要なのではないか。先生にとっての便利さと、子供にとってためになることとは別の話であるし、携帯電話所持の是非の議論とも違う。


 iPadだけかと思っていたら、ちゃっかり一緒に「電子黒板」も復活していた。鳩山首相時代には「無駄」の典型例に挙げられていたはずだが、事業仕分けに対する文部科学省の巻き返しか? 同じようなタブレット機能を持つとはいえ、iPadに便乗する形で教育現場に復活させるように見えるのもどうかと思える。これまでは教育のIT化はPCとソフトウェア、LANの敷設が中心だったはずだが、その効果の評価の議論がないまま、今度はiPadと電子黒板になるのだろうか。ソフトバンクからすれば、将来的な顧客を創出しているようもので、大歓迎ではあろうが。