Microsoftが欧州でGoogleを独禁法違反で提訴

 時代も変わったもので、かつては独禁法で提訴されるのが恒例だったMicrosftが、Google独禁法で提訴したという。国によって事情の違いがあるだろうが、欧州での話である。

Microsoft、Google提訴の理由を説明(ITmedia)
Microsoft、Googleを独禁法違反で正式に提訴 欧州で

 提訴は案の定、Google検索の独占が不当なものだとする。圧倒的なシェアを持っていることは明らかだが、欧州ではなんと95%のシェアであるという。これでは提訴も含め、あらゆる手段をもってしてでも。その独占を阻止したくもなるというものだろう。ただ提訴が米国内や日本ではなくて、欧州であるというところに、地域的な事情もありそうに見える。


 もともとMicrosoftは、米国籍企業であることとライセンス主義による独占で、どちらかといえば欧州からは敬遠され気味であったといえる。典型的な例はIEのシェアで、最も独占的だった時代でも欧州ではやや低めだった。それに代わり、オープンソースをベースとするFirefoxノルウェー発のOperaに人気が集まっていた。Googleに関してはWebサービスの内容からは、欧州の人にはMicrosoftのような独占の意識はそれほどなかったと思われる。ただ国ごとに「郷に入りては郷に従え」の対応は必要だった。ドイツにおいてGmailの商標は得られず、Google Mailになっていることなどがその典型である。


 欧州でGoogleMicrosoftの検索や検索広告に対して、どれだけの妨害をしたのかはわからないが、多分にMicrosftの被害者妄想的なものを感じざるをえない。あるいは訴訟自体が全くの戦略的な対抗策なのかもしれないが、かつてこのような訴訟そのものの影響でシェアや評価が逆転した例はないだろう。Googleの独占で不利益をこうむったといえるのはユーザではなく、検索広告に食い込みたいMicrosoftだけのように見える。かつてのMicrosoft有償ソフトウェアの独占では、ライバルが消滅したために選択肢がなくなったユーザが不利益をこうむったという違いがあるように思える。ただ独禁法違反を監視する「欧州委員会」というのも曲者で、かつてMicrosftに対しても含め、世界も驚くような独禁法違反を適用してきた。Microsoftはかつてさんざん叩かれた「敵」を、今度は逆に利用してGoogleの独占を弱めようとしているのかもしれない。


 さて日本の方では、Microsoftと検索で提携するはずのYahoo!JapanがGoogleと提携しために、実質的に「大連立」状態になってしまっている。公正取引委員会も「現時点では独禁法の問題なし」と判断してしまっているため、Microsoftが国内でこの連合に対して提訴に出ることも考えにくい。やはり欧州という土壌ならではの提訴といえそうだ。