ネット上のデマへの規制の要請

 震災後はマスコミ報道、ネットの情報とも、かつてないほどの事態になったように見えた。テレビは24時間、震災と原発の情報ばかりであったし、ネット情報へのアクセスも当然ながら加熱した。このブログでさえ、震災に関連したキーワードを含んでいただけで、異常にアクセス数が伸びた。それがどういうわけか、ネットにだけ「風評被害」の原因があるかのような政府の自主的規制の要請である。

ネットでのデマ、自主削除を--総務省が関係団体に要請(CNET Japan)
ネット上のデマ、法令・公序良俗違反は「管理者の自主的な削除」要請 総務省(ITmedia)

 政府の発表やマスコミの報道が「大本営発表」なら、ネットの情報は「流言飛語」だというわけだろうか。「いたずらに不安を煽る」というような言い方をしているが、少し国民を軽んじているのではないか。震災直後は、むしろマスコミ報道の方がよほどセンセーショナルに煽るような報道、批評をしていた。政府や原発関係の発表に対するマスコミ記者の不遜な態度や、緊急事態での優先度を認識していないような言動が鼻についた。平和ボケしているせいか、この期に及んでも、スキあらば政権批判に繋げたいだけのように見えた。ある時点からマスコミ報道は最低限しか見なくなった。


 ネットの情報は2次情報であり、その偏った1次情報に対して、いろいろな人がいろいろな事を言っているだけである。その情報にはアクセスしたい人だけがするだけである。そして複数の情報源があるから、どれが信憑性が高いと判断するかは自己責任が求められる。仮に誰かがネットにデマ情報を流したからといって、それをネットにアクセスする人がみな信じこむと思うのは間違いだろう。


 マスコミの報道、評論は、一方的に流すだけだから批判の余地もない。現地で確認したわけでもない原発状況の推測や、ドラマ仕立てにした被災地情報などもいらない。偏向した報道を入れたくなければテレビを消したり新聞を捨てるしか方法はない。マスコミが「物が不足している」と報道すれば消費者は買い物に走り、それを「買い占めが起きている」とするし、「野菜から放射性物質が検出された」と報道すれば消費者は買い控えるから、今度は「風評被害が広がっている」とする。節電の要請も同様であるし、このところは「自粛」も悪いと言わんばかりである。原発のセキュリティ対策とその事故処理の遅れがすべての元凶になっている悪影響を、いつのまにか国民のせいに転嫁するかのようなマスコミの論調である。不安を煽ったり風評被害を起こしているのは、むしろマスコミ報道だろう。ACの広告にしろ、何やら国民が浅はかであるかのような説教じみたものばかりである。


 今回の通達も、震災のときの一部の情報をとらえて、ネット規制の口実に利用したいだけのようにも見える。それならどこかの国と同じことではないのか。しかしこの通達には、既存マスコミは反対しそうには思えない。