「ウイルス作成罪」が成立

 「盗聴法」と同じく通称だろうが「ウイルス作成罪」なるものが国会を通過したという。震災復興に関連する法案に関しては与野党ガタガタしているが、与野党一致しやすい法案ということで通過したのだろう。また最近のハッカー攻撃多発が成立の追い風になったと思われる。

ウイルス作成罪を新設 改正刑法が可決・成立(ITmedia)
「ウイルス作成罪」盛り込んだ刑法改正案が可決・成立(INTERNET Watch)

 法的解釈をめぐっては、また賛否両論あることだろう。やたら規制好きの日本の当局によって、ネットでの活動が制限されないかという懸念がある。それはともかく、この「ウイルス作成罪」の法案提出は今に始まったことでなく、2003年に遡る。Wikipediaによれば

「2003年3月、法務省は、サイバー犯罪条約の批准要件を満たす為ウイルスの作成・所持を犯罪構成要件とする「ウイルス作成罪」を新設する方針を発表した」


とある。この頃には米国の大手サイトにウイルスによる攻撃があり、懸賞金を掛けて犯人を逮捕したという事件があった。日本でもそうした事件に対処できるようにという意図があったのだろう。しかし、いつも法律は後追いであるとはいえ、すでに時代がだいぶ変わってしまっていることが気になる。


 まず「ウイルス」とは狭義になっている。現在ではいえば「マルウェア」だろう。国内法だけに作者が日本国籍の人間にしか適用されない。これほどネットがグローバル化している状況で、作者を特定するのはほぼ不可能であるだろう。むしろ故意に流布させる方が問題になるだろう。以前は特定の人間が特定のサイトを攻撃する構図で犯罪も見えやすかったが、現在はボットのように潜伏しながら外見的には被害が見えにくく、いつのまにか情報漏えいしていたということが多い。そして多くはそれは海外からのアクセスによるものであるからである。また海外に設置してある日本の組織のサーバーなどに対しては、適用外になるのではないか。国内にいる犯罪者が国内に設置してあるサーバーに、自ら作成したマルウェアで攻撃を仕掛けない限り、適用はできないだろう。そうしたケースは稀であると思われる。今回のソニーに対するサイバー攻撃などに対しては無力である。


 それでもこの時期に急遽成立したところをみると、国会議員の先生方が一致団結するためのダシくらいに使われた法案なのかもしれない。先生方にとっては、何だかよくはわからないが、おそらく「国民のためになる」法律を成立させたと自己満足できるものだったのだろうか。