Huluは放送と通信の融合の黒船となるか

 Huluの名前が目に付くようになったと思ったが、こういうことであった。掛け声だけは聞かれてきた「放送と通信の融合」を実践する存在として、今後、世界および日本にも影響を与える黒船になりうるのだろうか。

放送と通信融合の黒船? Huluは日本のテレビ局に変革..(ITmedia)
月額1,480円の映像配信「Hulu」が日本参入。1日開始..(AV Watch)

 日本国内では今年、国策として地デジ移行がなされたが、何か、上から押し付けられたような感じで、テレビが発展したからという気はしないというのが実感であろう。むしろ時代に遅れているのでないかという気がする。「デジタル化」というキーワードは、新しいテレビに買い替えることではなかったはずである。むしろこれを機にテレビなしの生活に入ったという人もいる。NHKの受信料を払うかどうかという問題でもない。


 Huluの登場の仕方を見ると、動画の流通を一変させたかつてのYouTubeのようでもあり、電子書籍化の大きな流れとも似ている。旧メディアであるテレビの配信方法と受信のあり方も一変させるものになるかもしれない。Huluそのものがというより、「放送と通信の融合」と称するテレビのネット化が大きな背景としてある。すべての旧メディアがネットに統合されていく中で、テレビそのものも例外ではなくなっている。


 しかし電子書籍もそうであるように、旧メディアの権利関係を有している団体はこれに対して抵抗を続けるだろう。既得権を守りつつ、旧メディアの一部にネットを取り込もうとする。しかし長い目で見れば、こうした抵抗は長くは続かないだろう。それはもはやネットの問題というより、社会の問題となる。いつまでもテレビの放送時間が生活の時間を制限するような時代でもなくなるだろう。


 いつでもどこからでも必要な番組を視聴できるようになるのが当然であり、それを可能とするのはテレビではなく、ネットである。震災時にSNSへのアクセスが増えたと同時に、ワンセグも必要なものであることが認識された。ワンセグはネットではないが、今後スマートフォンタブレットも「受信機」として可能にするには、ネット配信が絶対的なものとなるだろう。


 個人的にはテレビ局など、クラウドサービスへと移行していくべきだと思うが、放送の許認可など既得権がどう変わっていくかが大きな問題となる。同じテレビ番組でも、テレビで流せば放送であり、ネットで流せば通信となるからである。DVDなどで配布すれば著作物だろう。放送番組のオンデマンドやDVDでの販売は、微妙な関係にあるだろうが、ネットの大きな進歩の中では、適用される法律の違いなどはあまり興味のない問題ではある。