大学教科書の無料提供者に賞金

 大学の講義ビデオがYouTubeで公開されたり、講義資料がPDF文書で公開されたりで、インターネットのおかけで大学の講義内容もかなりオープンになっている。本当にネットでNHKの「放送大学」のように学びたいと思う人にとってはよい環境になったものである。そして今度は大学レベルの教科書を、いわばオープンソース化しようとする試みがある。

米非営利財団、大学学部レベル教科書の無料提供者に2万ドルの賞金(INTERNET Watch)

 米国の非営利団体が教科書の無償提供者に賞金を出すという。単なるボランティアで教科書を提供しようとする人だけでなく、実利も得ようとする著者と、競争を促すことによって教科書の内容の質を高めようとする狙いもありそうだ。


 実際、大学教養程度のスタンダードの教科書は昔から「定番」は決まっている。世界的な名著はともかく、これは各国によってあるものだろう。たとえば大学の微積分の教科書といえば、高木貞治「解析概論」である。ただ、いきなりこれを大学1年からまともに読みこなして勉強するには、かなり学力が必要である。その意味ではバイブルのようなものである。実際には、もう少しくだけた教科書から入る方が、大学初級では挫折しなくてよいだろう。


解析概論 改訂第3版 軽装版

解析概論 改訂第3版 軽装版


 数学に限った話ではないが、大学の教科書もやはり時代の流れに沿ってリニューアルされることは必要だろう。その意味ではネットを通じて広く著書を募集するというのも面白い発想である。内容の更新もしやすい。


 大学の教科書で一番つまらないことは、担当教授の著書を教科書として、受講者全員が買わされることである。その著書が世の中でも有名な書ならともかく、担当教授のクラス周辺でしか売れないものなら、なんとなく買う気が失せる。単位をお金で買うような気がしてしまうからである。


 それはともかく、現在のYouTubeで公開されているStanford大学やMITなどの公開講義は、社会人になってから見てもなかなか面白い。内容はわからないまでも、あちらの大学の生の授業の様子が伝わってくるからである。これに講義で配布されている資料も同時に手に入れば、さらに授業へのバーチャルな参加意欲も増す。


 事実上、これまでのこうした講義の公開が、標準的な教科書の提供者を求める試みに繋がっているような気がする。英語に限らず、言語を問わずに集まるかもしれないが、本当に良質な教科書はは各国語にもすぐに翻訳されることになるだろう。大学教科書のオープンソース化に期待したい。