C言語の開発者デニス・リッチー氏が死去
C言語を勉強したことがある人なら、およそ知らない人はいない、カーニハン&リッチー「プログラミング言語C」の著者でもあるデニス・リッチー氏が亡くなったという。UNIXの1つの時代が終わったことを象徴しているような気がする。
C言語の開発者、デニス・リッチー氏が死去(ITmedia)
C言語はプログラミング言語の1つというより、UNIXそのものの歴史であり、近代的なプログラミング言語の元祖になっているといってもよい。近年のJavaだJavaScriptだPHPなどなどネットに関わる言語は、すべてC言語系の言語だといってよい。それにUNIXはLinuxをはじめ、サーバーOSの元祖である。
UNIXの開発はC言語と一体のものだった。C言語を学ぶことはUNIXのOSそのものの仕組みを学ぶことだった。なぜならUNIXはC言語で書かれていたものだったからである。そうして当事者によって書かれた「プログラミング言語C」はC言語とUNIXのためのバイブルとなった。最初に書かれてある例題は「Hello, World」と表示するプログラムだった。以後、どんな新しい言語でも、まず「Hello, 〇〇」と表示させるのが入門書の定番の例題スタイルとなった。
UNIX&Cは、カーニハン氏とリッチー氏の所属していたベル研究所で当時開発されたものだった。それがSystem Vとなり、一方でベル研から配布されたUNIXを元にカルフォルニア大バークレイで改造されたものがBSDとなっていく。それは主にSunのワークステーションなどに受け継がれていく。いろいろな経緯はあったものの、現在は商標の関係でUNIXの名前そのものを冠したOSは存在しない。そしていわゆるUNIXワークステーションと呼ばれた高価なマシンもサーバー用途以外に見かけることもなくなった。UNIXの伝統や精神は、PCのLinuxなどに受け継がれる形になっている。
一方、C言語そのものもWindowsその他に移植されていくと、もはやUNIXとのセットというイメージで捉える人は世代とともに少なくなっていった。ビット演算などハードウェアを直接操作しやすい言語として、組込み系などのプログラミングに利用されることを別にすれば、実用のジャンルは狭くなっていった。
時代の流れではあるが、UNIX&Cはもともとプロ向きであり、その基本精神はリッチー氏らに築かれたものであり、これがTCP/IPと結びついて現在のインターネットの全盛に結びついたといえるだろう。
そういえば「プログラミング言語C」の翻訳者である石田晴久先生も何年か前に亡くなっている。自分も翻訳書は2冊は買っていたはずである。直接面識があったわけではないが、何度かセミナーで見かけたり、偶然にユーザとして電話で話すことになったり、とある喫茶店で出くわしたこともあった。いつのまにか思い出のようになったのは、やはり時間が経ったのだと改めて実感させられる。