電子書籍の利用率は日本は1割

 現状では日本での電子書籍の利用率は1割程度だという。これは利用する、しない以前に、国内の電子書籍およびその環境が整備されていないからだといえるだろう。中国では7割だというが、国内事情の差が大きく、単純な比較はできないと思われる。

電子書籍の利用率、日本は1割、中国は7割〜..(INTERNET Watch)

 なかなか電子書籍が浸透してこないというのは、皮肉なことに国内の紙の書籍の出版社、書店が頑張っている結果だともいえよう。簡単に電子書籍に移行してしまえば、従来のビジネス構造が崩れてしまう。既存の紙の書籍からの収益を守りながら、一部電子書籍へ移行しながら全体の利益を守るという、ソフトランディングを模索している段階ともいえるかもしれない。しかし、そううまくいくかどうか。


 消費者側からすれば、紙の書籍は手に入らないが、電子書籍でなら探すことができるという状況は今後とも多くあるだろう。絶版になったものや古本になっているものを古本屋などを回って探すのは、その手間や時間の方が書籍代よりも高くついてしまう。電子書籍なら検索で一発なのである。新しい書籍は難しいだろうから、こちらを先にしてほしいくらいだが、それはそれで利益にならないのだろう。


 新しい書籍を紙だけで出版するか、価格を下げざるをえない電子書籍でも出すか出版側としては悩ましいところなのだろう。それが利用率1割の実態なのではないか。消費者が望んでいる、いないではなく、消費者にとっては選択肢がある方がいいに決まっている。消費者は出版社や書店のために書籍を購入しているわけではないからだ。消費者が望んでいないから電子書籍の種類が少ないのではなく、電子書籍をあまり出したがらないか小出しにしているために、消費者が利用できる機会が少ないのである。


 また書籍の再販制度の存在も影響しているだろう。電子書籍にはこの制度が適用外だからである。これは出版社、書店には有利に働かないからだろう。電子書籍はいくらでも安売り合戦が可能になってしまうからである。そういう実情を抜きにして、何やら日本の消費者の電子書籍への意識が世界から遅れているかのように分析するのは誤っているように思える。