「坂の上の雲」と世代

 ふだんニュース以外はあまりテレビを見ているわけでもなく、特にドラマはたまたまチャンネルを合わせたらの「瞬間的」にしか見ることがなくなった。それでも年末気になっているのが「坂の上の雲」である。


 「坂の上の雲」は時代劇というより近代劇というべきか。ドラマとしては異例の3年がかりのものだけに、それだけ制作に力が入っていることがうかがわれる。3年に渡るのも予算の関係で単年度では制作できなかったからだという。それが余計にドラマに重みと期待感を抱かせるのかもしれない。最近のNHK大河ドラマの内容の軽さと、対照的にさえ感じられる。


 最終回は次週だが、日本海海戦の結末と主人公らのその後が展開されるだろう。史実と照らし合わせながら視ると感慨深い。それにしても秋山真之の本部に打電した
「天気晴朗なれども波高し」
と、全軍の士気を鼓舞した、
「皇国の興廃此の一戦に在り、各員一層奮励努力せよ」
は、けだし歴史的名言である。当時の日本を背負うという大和魂の精神が、時代を超えて伝わってきそうな言葉ではないだろうか。秋山真之という人は、軍事戦略の智謀だけでなく、正岡子規が同級生だったというだけに文才にも長けていたことがわかる。原作の司馬遼太郎が、最も描きたかったのがこの時代のエリートの日本人の精神だったのだろう。それだけに安っぽくドラマ化されるのを生前は拒否していたと思われる。



三笠艦橋の図(中央左から加藤・東郷・秋山) 東城 鉦太郎画


 このドラマに関しては俳優がどうこうより、原作の司馬遼太郎の視点がどれだけ反映されているかに注目している。俳優といえば、昔は東郷平八郎山本五十六といえば三船敏郎と相場が決まっていたものだが、現在は渡哲也や役所広司が演じている。世代によってイメージが変わるのは仕方のないところか。