松井、メジャー昇格

 渡米10年目にして初めてマイナー契約となっていた松井が、ようやくレイズのメジャー昇格を果たした。といっても必ずしも3Aでの成績が良くての昇格だったわけではない。そこにはレイズのチーム事情の現状もあったようだ。

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 そもそも今シーズン前はFAの指名打者の契約状況は厳しく、同じような立場だった元同僚のデーモンやゲレーロもやはりマイナー契約をせざるをえない立場になり、そこからメジャー昇格をしている。初めからメジャー契約となるのと何が違うのか。それはマイナー→メジャーの方が圧倒的に契約金額を買い叩かれるということである。メジャー契約は売り手市場、マイナー契約は買い手市場だといえようか。近年の指名打者の認識が、スペシャリストからレギュラー選手の1日休養のためのポジションへと変わってきたことに加え、昨季の成績と年齢などが問題にされる。いずれも逆風に曝された結果だったといえる。


 とはいえチームとしては優勝争いをする上では、多少衰えたとはいえ、やはり百戦錬磨のベテランの力が必要になる場面も長いシーズンの中では数多くある。かつてライバルチームであるヤンキースで勝負強い打者として活躍し、ワールドシリーズ優勝にも導いた実力選手に、いまだに期待するものがあっても不思議ではない。その選手をまんまと契約というビジネスでほとんどタダ同然でチームの駒にすることができたわけだから、レイズとしてはしてやったりかもしれない。仮に活躍しなかったとしても、ほとんど損害は生じないわけである。


 レイズの現状としてはア・リーグ東地区トップを走る。岩村が在籍した頃から東地区の首位争いをするチームになってきた。ヤンキースレッドソックスはじめ歴史ある強豪がひしめく厳しい地区である。これから夏場にかけて上がってくるのは、本当に選手層の厚いチームである。にもかかわらず現在は外野手はじめとして故障者続出だという。そこで保険をかけていたかのような松井獲得の成果が問われる場面が出てきたというわけである。どうやら松井に期待されているのは単に指名打者としてだけでなく、外野手としてのようである。


 やや不思議なのは3Aでの打撃成績が上がらないにも拘らず、なぜレイズは松井を昇格させたかである。端から3Aは、キャンプにも参加できなかったためできなかった調整の場に過ぎながったようにみえる。実績のない若手選手ならば3Aで実績を上げて、十分なテストの上での昇格となるだろうが、もはやそういうレベルの選手ではない。逆にいえば3Aで活躍したからメジャーで活躍できるとも限らない。調整が済んだら松井に求められるものは、メジャーでのかつてのような勝負強さだけである。本当にそれがすでに無理なものならば、それは即解雇となるだけだろう。それがメジャーの厳しさでもある。かつての野茂の晩年もそうだった。


 しかし松井はどういう形であれ、結果を出してくれるだろう。そういう星の下に生まれている選手と思えるからである。背番号もこれまでの代名詞であった「55」ではなく「35」になりそうだが、それはそれで松井の歴史の1つとなるだろう。いずれにしろ多くの人が期待する場面が再びやってきた気がする。それはヤンキースとの優勝争いの重要な場面での活躍である。